トピックス太陽−地球系のL5点付近の
観測の結果について

「はやぶさ2」は今年(2017年)の春に、太陽−地球系のラグランジュ点L5付近を飛行していました。その機会を利用して、L5点付近に小惑星が存在するかどうかを確認するために、望遠の光学航法カメラ(ONC-T)でL5点付近の撮像を行いました。(詳しくは「太陽−地球系のL5点付近の観測について」をご覧ください。)

撮影は2017年4月18日(日本時間)に行いました。30分間隔で同じ領域を4回撮影し、撮影された画像を比較することで移動天体を探すという手法をとりました。この観測では前述の4回連続の撮影を3セット行いました。1回の撮影の露出時間は、ONC-Tが撮影可能な最長の178秒としました。

撮影後しばらくは探査機の姿勢の関係で画像データを地上に降ろすことができなかったため、解析の開始が遅れました。通信条件が整って画像を探査機から取得し解析したところ、移動天体は発見されませんでした。画像の解析はONC(光学航法カメラ)チームの布施哲治さん(情報通信研究機構)と地上観測チームの黒田大介さん(国立天文台)が独立に行っています。

木星の場合にはトロヤ群小惑星と呼ばれる小惑星がL5点(そしてL4点)付近に多数存在しているのですが、地球の場合にはL4点付近に1つ発見されているだけです。今回の観測は撮影した枚数もあまり多くはなかったですが、やはり地球のラグランジュ点L5付近には小惑星はあまり存在していないことを示唆するものになっています。ちなみに、米国のOSIRIS-REx(オサイリス・レックス)の方は今年の2月にL4点付近を通過したときに同様な観測を行っていますが、やはりL4点付近の小惑星は発見していません。

今回の撮影では新しい小惑星は発見されませんでしたが、「はやぶさ2」が目的のリュウグウに接近していくときや、リュウグウの周りに衛星が存在しないかを確認するときの予行練習にもなっており、有意義な運用となりました。


※ONC-Tは、JAXA、東京大学、千葉工業大学、立教大学、明治大学、名古屋大学、会津大学、高知大学、産業技術総合研究所の協力のもと開発され、観測運用されている機器です。今回公開された画像の処理は、国立天文台および情報通信研究機構の協力を得て行われました。


はやぶさ2プロジェクト
2017.08.23