サイエンス小惑星リュウグウ

小惑星は、太陽の光を反射して輝いていますが、小惑星からの光のスペクトルを調べると、いくつかのグループに分類できることがわかります。「はやぶさ」が探査した「イトカワ」は、主な材料が岩石質と推定される「S型小惑星」に分類されます(Sは石質を意味する英語のStonyまたはケイ素質を意味するSilicaceousに由来します)。これに対して、「はやぶさ2」が目指しているのは、表面の岩石の中に有機物などを多く含むと考えられている「C型小惑星」であるリュウグウです(Cは炭素質を意味するCarbonaceousに由来します)。C型小惑星はS型小惑星よりも「始原的(太陽系初期の情報を多く保っている)」とされています。

小惑星の多くは、火星と木星の間の「小惑星帯」とよばれる部分に存在しています。その中でも太陽からの距離が近いところにはS型小惑星が多く分布しており、小惑星帯の中程にはC型小惑星が多く分布しています。さらにより遠くの木星の軌道に近いあたりには、C型よりもさらに始原的な天体と考えられるP型やD型小惑星という天体が存在しています。

火星や地球など、太陽系の内側にある惑星は「地球型惑星(岩石惑星)」と呼ばれています。「S型小惑星」を探査することによって、これら岩石質の惑星たちの原材料の手がかりが得られます。これまで、S 型小惑星は、地球上で最もたくさん発見されている隕石である「普通コンドライト」のふるさとではないかと予想されていましたが、それを立証する手立てはありませんでした。2005年、小惑星探査機「はやぶさ」はS型小惑星「イトカワ」に到着し、その観測データからこの予想が正しいことを示しました。さらに、2010年、「はやぶさ」はイトカワの物質を地球に持ち帰ることに成功しました。その物質を分析したところ、S型小惑星が普通コンドライトの母天体であることが完全に証明されたのです。

  • 普通コンドライト隕石のふるさとが完全に証明

これに対して、「C 型小惑星」は、「炭素質コンドライト」と呼ばれる隕石のふるさとであると予想されています。「はやぶさ2」が向かうリュウグウは、有機物(炭素を含む化合物)や水を多く含む天体と考えられています。炭素と水は、我々人類を含む地球上の生物の最も基本的な要素であり、地球生命の原材料とも言えるでしょう。


地球からの観測によるリュウグウの情報

小惑星リュウグウは、1999年5月10日に米国のLINEARチームがSocorroの観測施設にて発見しました。仮符号は1999 JU3でしたが、その後の観測によって162173という確定番号が付与されました。そして、2015年7月から8月にかけて命名キャンペーンが行われて、同年9月に「リュウグウ(Ryugu)」と名付けられました。 地球からの観測によって、次のようなことが分かっていました。

大きさ     :約900 m
形       :ほぼ球形
自転周期    :約7時間38分
自転軸の向き  :黄経(λ) 325±15°  黄緯(β)-40±15°
反射率     :0.05 (黒っぽい)
タイプ     :C型(水・有機物を含む物質があると推定される)
軌道半径    :約1億8千万km
公転周期    :約1.3年

  • リュウグウとイトカワの大きさの比較。リュウグウの形はこの図のようなものと想定された。
  • リュウグウとイトカワと惑星の軌道

今後、「はやぶさ2」の探査によってより正確で詳しい情報が分かってくることになります。



  • 修正履歴:2018.09.28 命名キャンペーンの年を2015年に訂正しました。