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はやぶさ2#寄席 〜宇宙落語とスペシャルトーク〜 の
録画公開

2023年2月18日に相模原市立博物館で行いました「はやぶさ2#寄席 〜宇宙落語とスペシャルトーク〜」の録画を公開します。 このイベントは、相模原市立博物館および相模原市民文化財団とはやぶさ2#プロジェクトとのコラボ企画で、落語家の桂福丸さんと有限会社ライブの上坂浩光監督にご協力いただいて実現しました。 イベントについては以前の記事 (こちら) をご覧下さい。

録画は、以下に示すURLをアクセスして、お楽しみください。YouTubeの中継や録画の制作・公開は、星空公団のご協力を得ています。

<第1部> https://youtu.be/mQVxpfAn8B8
・宇宙落語「ブラックホール特命担当大臣」 桂福丸
・はやぶさ2#の最新?情報 吉川真
・トークショー1 「はやぶさ2のピンチや困難」 福丸、津田、吉川

<第2部> https://youtu.be/gpCPQlrdTh4
・ビデオ「小惑星探査機はやぶさ 60億kmの旅を振り返る」
・全天周映画「HAYABUSA2 REBORN~帰還バージョン」(録画には含まれていません)
・トークショー2 「今後の可能性(探査、映像、落語)」 福丸、上坂、津田、吉川

出演者からのコメントです:
桂福丸:「はやぶさ2が教えてくれたのは、宇宙の素晴らしさだけではない。人間の素晴らしさもだ。」
上坂浩光:「宇宙落語、とても楽しかったです。また是非企画してください! REBORNのトークイベント後に、皆さんと話せなかったのが唯一の心残りでした。」
吉川真:「落語も映像も探査ミッションも、私たちの生活を豊かにしてくれる源です。相乗作用で、新しい世界を作っていきましょう!」

なお、この「はやぶさ2#寄席 〜宇宙落語とスペシャルトーク〜」のイベントは、その一部に皆さまから「はやぶさ2」にいただきました寄付金を使わせていただいています。


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出演者集合写真。
左から津田雄一はやぶさ2プロジェクトマネージャ(元)、上坂浩光氏(有限会社ライブ/「HAYABUSA2〜REBORN」監督)、桂福丸氏(落語家)、吉川真はやぶさ2ミッションマネージャ(元)。


第1部での桂福丸さんの落語の様子


第1部でのトークショーの様子


第2部でのトークショーの様子


第1部で使われためくり





※質問について

事前にツイッターで、また当日にも質問を受け付けましたが、イベント中には時間の関係で回答出来なかった質問がありますので、以下でご回答いたします。(質問の文言は、その意図は変えずに変更したところがあります。)

質問1:もしも「はやぶさ2」が有人の探査機で、吉川、津田両先生が乗り込めたとしたら、はやぶさ2プロジェクトでどんなことをしたかったと思いますか?
回答(津田):リュウグウ到着後、「はやぶさ2」より先に地表に降り立って、着陸候補エリアの岩の整理整頓をしたと思います。それが反則!であれば、はやぶさ2が着陸する際に、宇宙遊泳しながら、タッチダウンする瞬間を絶好の位置から見てみたいです。
回答(吉川):リュウグウに降りたって、リュウグウをぐるぐる歩き回り、最後にオトヒメ岩塊の上で昼寝をしてみたいです。

質問2:「はやぶさ2」が地球に戻って来ていた時と、今の航行スピードって、同じなのですか?違うとしたら、どうして違うのでしょうか?
回答:「はやぶさ2」のような探査機でも惑星や小惑星でも、そのスピードは軌道で決まっています。さらに、一つの軌道でももしその軌道の形が楕円形だとしますと、太陽からの距離によってスピードは変わります。太陽に近ければスピードは速くなり、遠ざかると遅くなります。「はやぶさ2」が地球に戻ってきたときと今では太陽からの距離が違いますから、スピードも異なっています。

質問3:「はやぶさ2」は拡張ミッションで金星軌道付近まで太陽に近づいていますが、熱設計として想定されていたものなのですか? また、選ばれませんでしたがEVEEAシナリオやEVEEJシナリオでは金星スイングバイ時の金星のアルベドによる熱入力も加わるかと思いますが、それも可能だったのですか?
回答:もともとは金星軌道付近まで近づくことは想定していませんでした。ですので拡張ミッションを実施するにあたり、設計想定より高温になることに耐えられるかを調べなおし、運用の方法に制約を設けるなどで対策をしました。金星スイングバイは一瞬なので(金星近傍に居続けるわけではないので)、熱設計上は金星アルベドは気にしなくても大丈夫です。

質問4:S/Nについて考えを巡らせているときに、送信アンテナからの信号電力は距離の2乗に反比例して弱まりますが、一方、アンテナ利得は有効開口面積に比例して大きくなります。深宇宙を飛行する小型探査機からの微弱な電波は、直径30mのパラボラで追尾すれば受信できます。地球への最大の雑音源は、太陽熱放射です。そのためS/Nは昼と夜とで、大きく異なると考えたのですが、質問は、はやぶさ2と地球局の交信は、夜間にのみ行っているものです か? 昼間も地球局とはやぶさ2は交信しているのですか?
回答:日中も運用を行っています。太陽の影響を受けるのは、地球から見て探査機と太陽の方向がすごく近づくときのみです。そのような時期ははやぶさ2の6年間の運用のうち1か月間だけでした(そのような位置関係を「合」といいます)。合の時は運用を休止し、地上からのコントロールなしに探査機が単独で航行を続けるようにしていました。

質問5:デジタル通信の場合、信号電力、雑音電力のほかに、誤り訂正符号化率や、伝送レート(bps)を含めて、Eb/N0がS/Nの代わりに使われています。「はやぶさ2」と、地球局の伝送レートはどうなっていますか? 雑音や距離に応じて、伝送レートを適切なものに変更していますか?
回答:はい、深宇宙の運用でもEb/N0は地上局でモニターすることができます。伝送レートは距離や天候に応じてEb/N0をモニターしながら随時調整しながら運用しています。

質問6:「はやぶさ2」と地球局の交信は、夏よりも冬のほうが、回線が成立しやすいということはありますか? もしそうなら、それはパラボラアンテナの鏡面の温度の差や、地表の温度の差が影響しているのではないかと思うのですが、何か統計的な資料をまとめてませんか?
回答:日本では夏より冬の方が湿度が低いため、回線がちょっとよくなる傾向にあります。特に高い周波数(「はやぶさ2」の場合、XよりもKa帯)の方がその傾向が顕著です。統計的なデータはとっていますが、外にお見せできる資料にはなっていないかもしれません。一般的性質ということであれば、NASAのDSNの資料がネット上で検索できるので何か見つかるかなと思います。

質問7:「はやぶさ2」と地球局の通信の方式や、アンテナ(どこのアンテナ、製造メーカー、三軸制御能力などの仕様)、誤り訂正符号化方式などを、おさしつかえなければ教えていただけませんか? 深宇宙との交信は、雑音と信号について考える上でとても参考になると思うのです。
回答:技術的な詳細になりますので、回答は控えさせていただきます。たとえば、エルゼビア(Elsevier)から出版しました「はやぶさ2」の工学の本の23章には「はやぶさ2」の通信についての説明があります。

はやぶさ2拡張ミッションチーム
2023.3.27