トピックスはやぶさ2拡張ミッション
2021年のイオンエンジン運転ノルマ達成!


(©JAXA)

「イオンエンジンが予定時刻通りに停止していることを確認しました!」という明るい声が管制室に響き、私もほっと胸をなでおろしました。
日本時間2021年12月27日5時5分、はやぶさ2は予定通りにイオンエンジンを停止し、これをもって「2021年のイオンエンジン運転ノルマ」を達成したことを確認しました。
今季はイオンエンジンを使い倒すためのデータ取りや運転条件のチューニングなどを行いながら、最初の目的地である小惑星2001 CC21に向けた軌道変更を順調に進めています。
とはいえ、その到着も2026年の予定ですから、まだまだまだまだ先の長い話です。
先が長い旅を息切れせずに歩くコツとしては「小さい幸せを喜ぶ」ことでしょうか。イオンエンジンも100時間とか1000時間とか運転の記念ごとに実績解除のシールを管制室の窓に貼って喜んでいます。(本当は1000時間ごとにシールを貼ろうと思ったのですが、「窓が埋め尽くされるのでやめて」と怒られたので
10/100/1000時間とlogスケールになりました。無念。)

というわけで、今年の歩みを振り返ってみようと思います。

まるで「玄関先にランドセルを放り投げて遊びに行っちゃう小学生」のように、カプセルを分離してスイングバイで地球を離れたのが昨年の12月6日のことです。その後、まだ見ぬ小惑星2001 CC21に向かう軌道に乗せるため、今年の1月5日にはイオンエンジンによる巡航を再開しました。
途中、太陽に近づいて探査機の温度が上がるためにイオンエンジン運転は数カ月間休止し、5月からイオンエンジン運転を再開しました。

10月23日には、初代「はやぶさ」のイオンエンジンが達成した力積0.9474 MN・s(メガニュートン秒)を上回りました。
力積とは物体に作用させた力の大きさと作用させた時間の積で、物体の運動量変化を表す量なので(高校物理で習いますね)、「どれくらい探査機の速度を変化させたか?」の指標となります。
初代はやぶさのイオンエンジンがのべ4万時間弱かけて達成した力積を、より短い時間でなおかつ拡張ミッションの中で達成できたことは、「イオンエンジンの性能を向上させられて、なおかつ長時間運転できるミッションをもらえてよかったね」と言われているようで嬉しい気持ちになりました。
「ゆっくりでも止まらなければ結構進む」の言葉通りです。以降は日々記録を更新する巡航となりました。
とはいえ、運転期間が長いというイオンエンジンの特徴故に、他の仕事をしているときにも常にエンジンのことが気になっていて、気持ち的にも苦労させられました。
イオンエンジンも「もっとしっかり研究して、カッコよく運転してくれよ」と思っているかもしれませんが・・・。

これにて年内のエンジン運転は完了となり、イオンエンジン担当としては穏やかな心で年越しできそうです。
皆様今年も応援ありがとうございました。良いお年をお迎えください。


(©JAXA)

イオンエンジン担当:細田聡史、月崎竜童、今井駿、西山和孝
はやぶさ2プロジェクト
2021.12.28