No.2:イオンエンジン運転 99.9%達成まであと少し
  R-107(地球帰還まであと107日)

地球帰還へ向けた運用が続いています。前回「地球と探査機との距離は1億km以下となりました」と書きました。その後も距離はぐんぐんと縮まっていて、5000万km台にまでなりました。8月28日には地球帰還まであと100日となり、2014年12月3日の打上げから考えると、日程的にも飛行距離的にも、往復の旅の95%以上のところまで来たことになります。

(参考)地球と「はやぶさ2」との距離
  1. 2020年8月28日(R-100)5000万km
  2. 2020年9月10日(R-87)  4000万km
  3. 2020年9月26日(R-71)  3000万km
  4. 2020年10月16日(R-51)2000万km
  5. 2020年11月9日(R-27)  1000万km
  6. 2020年12月6日(R-0)    地球帰還

「行きと帰りの違いは何ですか?」・・・子供たちからのよくある質問のひとつです。行きのゴールは小惑星リュウグウ、帰りのゴールは地球ですが、帰りはリュウグウの物質というお宝を携えていることがいちばんの違いと言えるでしょう。軌道の面では、天体と探査機との相対速度が違います。行きは動くリュウグウに追いついて最終的にはリュウグウと同じ速度(相対速度ゼロ)で太陽のまわりを回るよう、じわりじわりと寄せていきます。一方、帰りは地球軌道と探査機軌道の交差点でちょうど地球と遭遇するように、タイミングを合わせていく感じです。帰還できるタイミングがほぼ決まっていてやり直しがきかないため、計画通りに確実にイオンエンジンを運転し、ノルマ(地球帰還に必要な減速・加速)を果たしていくという、堅実な運用が求められます。

往路(地球→リュウグウ)は「日本からブラジルにある6cmの的を狙うのと同じこと」などとも例えられていましたが、復路(リュウグウ→地球)の例えは、津田プロマネの言葉を借りれば「何年何月何日何時何分何秒に的に当てるかが決まっていて、それに合わせて狙っているようなもの」ということです。

復路のイオンエンジン運転も残りわずかとなりました。8月28日(あと100日となる日)には往復の速度変化の全ノルマのうち99.9%が達成される見通しです。そこであえていったんイオンエンジンを停止して、「はやぶさ2」の現在位置を精密に測定し、計画軌道とのごくわずかなずれが計算されます。それを補正するようにイオンエンジンに復路最後の「ひと噴き」の指令を送るのが9月中旬ということです。イオンエンジン運転のノルマ100%達成まであと少し! 10月に入ってからは、姿勢制御用の化学エンジンを用いた地球への精密誘導が始まります。


大川拓也
2020.8.21


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