トピックス光学航法望遠カメラで火星を撮影しました

本日、2016年5月31日は、火星が地球に最接近します。ツイッター「たまてばこvol.2」でお知らせしていますように、現在、「はやぶさ2」もちょうど地球と火星の間付近にいるので、太陽−地球−はやぶさ2−火星のように並んでいます。つまり、今、火星を見ると、そのそばに「はやぶさ2」がいることになります。もちろん、見えませんが。

この機会を利用して、光学航法望遠カメラ(ONC-T)で火星を撮影してみました。その写真が写真1です。

  • 写真1 ONC-Tが撮影した火星
    2016年5月24日21:46(日本時間)撮影

写真1のどこに火星があるか分かりますか? よく見ると中央付近に赤い点があります。これが火星です。「はやぶさ2」から火星までの距離は約5000万kmです。拡大してみると写真2のようになります。

  • 写真2 写真1で火星が写っている部分を拡大したもの

確かに赤い星が写っています。ただし、この写真は疑似RGB画像になります。ONC-Tのv、b、wバンドの3つのフィルターを通して撮影した画像を色合成したものです。なお、写真1はONC-Tが撮影した画像全体で画角は6.35°になります。この画像の中に火星以外の星が写っていないことを不思議に思う人もいるかもしれません。その理由は、この撮影は火星の明るさに合わせて16ms(0.016秒)という短い露出時間で撮影しているためです。そのために、暗い星は写らないことになります。

本日2016年5月31日は火星が地球に最接近しますが、その距離は地球から約7500万kmです。地球から見ると火星はマイナス2等星くらいに見えるそうです。今回の火星の地球接近は中接近ということで、地球に接近する距離としてはまずまずの距離ですね。たとえばハッブル宇宙望遠鏡では 火星の詳細な写真 が撮影されています。 また、石垣島天文台のむりかぶし望遠鏡(口径105cm)でもきれいな写真が撮影されています。

「はやぶさ2」の方は、火星から約5000万kmのところにいますから、地球から見るよりも火星は大きく明るくみえているはずです。ただ、ONC-Tは口径が約15mmの望遠鏡です。ハッブル宇宙望遠鏡は口径が2.4m(=2400mm)ですから、撮影される画像が全然違うのは当たり前ですね。ONC-Tは、小惑星リュウグウに接近したときに、その威力を発揮します。そのときは、ハッブル宇宙望遠鏡では撮影することができない画像を私たちに送ってくれるでしょう。

さて、この火星観測ですが、単に火星が撮影できるから撮影しているわけではありません。火星を撮影することによって、探査機の位置・姿勢情報と実際にカメラが向いている方向の整合性の確認など、リュウグウに到着してからの観測のための重要な準備になっています。リュウグウを観測できるまでまだ2年くらいありますが、着々と準備を進めています。

※参考)火星探査機「のぞみ」も火星の写真を撮っていました。日本の太陽系探査機としては、火星探査機「のぞみ」が 火星を撮影した画像を公開しています。 1999年8月28日の撮影ということで、今から17年も前のことです。このときの火星までの距離は556万kmということで、現在の「はやぶさ2」と火星の距離よりもかなり短いですが、火星の写真は似ていますね。「のぞみ」で使われたカメラは、MIC(Mars Imaging Camera)という「火星撮像カメラ」で撮影されたものです。

ONC-Tは、JAXA、東京大学、千葉工業大学、立教大学、明治大学、名古屋大学、会津大学、高知大学の協力のもと開発された機器です。

はやぶさ2プロジェクト
2016.05.31