トピックス「はやぶさ2」地球スイングバイ成功!

「はやぶさ2」は、2015年12月3日に地球に接近しスイングバイを行いましたが、その後、12月11日までの追跡観測と精密軌道決定・評価により、予定された軌道に乗ったことが確認されました。今後は、イオンエンジンによる噴射を行いながら、2018年の6月から7月に小惑星リュウグウに到着することを目指します。

スイングバイ後に取得された追跡データ(レンジとドップラデータ※1)によって推定された地球への最接近時刻は、2015年12月3日の19時8分7秒(日本時間)となります(世界時では、10時8分7秒)。また、そのときの高度は、3090kmです。これは、スイングバイ直前の予測時刻・高度と一致します。また、2015年12月8日の16:00(日本時間)における太陽に対する「はやぶさ2」の速度は32.069057km/sですが、これはスイングバイ前の計画値である32.069489km/sと比較すると、その違いは0.000432km/s(約43cm/s)になります。これは今後の探査機の軌道運用において全く問題がない値です。また、進行していく方向も予定通りで問題がないことを確認しました。これらのことにより、地球スイングバイによる軌道変更は成功したと確認されました。

参考までに、スイングバイ前に行った軌道補正マヌーバ(TCM)で行ったことを説明します。ここでは、図1に示すような地球を含む一つの面を考えます。探査機が通過する的(まと)のようなものです(専門的にはB-planeと呼びますが、ここでは詳細は省きます)。

  • 図1 スイングバイの的(まと)

この的の上で、ある特定の位置(ターゲット)を通過させるのがスイングバイです。11月3日に行ったTCM1では、この的の上でターゲットからのずれを約400kmから11kmに縮小しました。そして、11月26日に行ったTCM2では、このずれを3kmまで縮小しました。さらに3回目のTCMを行う予定でしたが、この3kmという値はスイングバイによる軌道変更にとって問題がないことが確認されたので、TCM3は行いませんでした。

※1:レンジとは地上局と探査機との間の距離のことであり、電波の往復時間で測定する。ドップラーとは、送信した電波の周波数の変化のことであり、この周波数の変化を測定することにより、地上局から見た探査機の視線方向の速度がわかる。ドップラーのことをレンジレイトとも呼ぶ。