トピックスこちら「はやぶさ2」運用室:No.1

『こちら「はやぶさ2」運用室』,略して“こちはや”を始めます.プロジェクトメンバーが,その時の「はやぶさ2」の運用状況等について,皆さんにご報告します.ご期待ください

TCM準備はじめました

11/3にスイングバイに向けたTCMを実施いたします. それに向けた準備が始まりました.TCMとはTrajectory Correction Maneuverの略で,「はやぶさ2」を,正確に地球スイングバイをさせるための軌道修正のことを言います.軌道制御そのものは一瞬ですが,様々な準備が必要で,現在,プロジェクトメンバーはその作業に追われております

今まではイオンエンジンを用いて,軌道制御を行っておりましたが,TCMでは化学推進系を使用します.化学推進系は,イオンエンジンに比べて推力が大きいため,短時間での軌道制御に適しています.

今回はTCM-1ということで,スイングバイに向けて最初のTCMとなります.現状計画では,TCM-1の後に,TCM-2,TCM-3の2回のTCMを予定しております.TCM-2,TCM-3は,スイングバイの直前に実施し,より精度の高い制御を行います.

スイングバイでは,進入速度(進入漸近線)に垂直で中心天体を含む面(B-planeといいます)を考えます(図1).この面のどこを探査機が通過するかによって,軌道の曲がり方が大きく変わるため,この通過点を正確に制御する必要があるわけです.

  • (図1)

現在のはやぶさ2の軌道は,ほぼ目標点の近くを通過する軌道にいるのですが,多少のずれがあります.これを修正して目標点を通過させるように行う軌道修正がTCMと呼ばれるものです(図2). 「冷やし中華はじめました」と,夏になると必ず掲示が出る中華料理店のように,スイングバイ前には必ずTCMがセットとなっております.それぐらい定番の運用なのです.

  • (図2)

今回のTCM-1で,目標点を通過させるように制御はしますが,スイングバイまでの運用で化学推進系を使ったりしますので,再び軌道がずれてしまいます.それをTCM-2,TCM-3で修正してスイングバイに臨みます.スイングバイの直前の1回のTCMだけでよいではないかと思う方もいらっしゃると思いますが,その場合は,必要な燃料が非常に多くなってしまいます.そのため,今回のTCM-1で前もって軌道を修正しておくことが重要となります.

TCMの実施のためには,第一に,探査機の軌道を非常に正確に知る必要があるのですが(これを軌道決定,ナビゲーションといいます),そのことについては別途,その道の専門家の方からお話してもらいます.

はやぶさ2 プロジェクトT.S.
2015.11.01