「はやぶさ2」が向かっている小惑星は、これまで1999 JU3と呼ばれていました。これは仮符号というものですが、このたび、Ryugu(リュウグウ)という名前が正式に決まりました。これからは、「はやぶさ2」が向かっている小惑星を、小惑星Ryuguと呼ぶことになります。
Ryuguという名称は、皆さんから応募された名前の中から選ばれたものです。JAXAでは、2015年7月22日から8月31日にかけて、1999 JU3の名前を公募しました。その結果、7,336件もの応募がありました。応募された名前について、名称選考委員会で審議した結果、このRyuguが選ばれたのです。
ただし、この時点では、まだ決定ではありません。この小惑星を発見した米国のリニア(LINEAR)チームから国際天文学連合にこの名前を申請してもらいました。その後、国際天文学連合の中で審査があり、2015年9月29日付けのマイナー・プラネット・サーキュラーに掲載されることで発表となったのです。国際天文学連合での小惑星名称の審査には、普通は3ヶ月くらいかかりますから、たった半月程度で名前が認められたのは、例外的に早いことになります。
Ryuguは、もちろん、浦島太郎の竜宮城にちなんだ名前です。浦島太郎は、竜宮城から玉手箱を持ち帰りますが、「はやぶさ2」はRyuguからそのサンプルが入ったカプセルを持ち帰ります。イメージがちょうど重なります。また、宇宙にある小惑星と海の中の竜宮城では正反対と思う人もいるかもしれませんが、「はやぶさ2」は、水を含んだ岩石(含水鉱物)を採取して、地球の海の水の起源を探ることも、その目的の1つとしています。ですから、水を連想させるRyuguは適した名前なのです。その他、既存の小惑星に似た名前の天体はないとか、神話由来の名称が好ましいという国際天文学連合のルールとか、第三者商標権についても問題ないとか、いろいろなことを検討した上で、選ばれたのです。
浦島太郎は、玉手箱を開けると白い煙が出てきて一気に年をとってしまいましたが、「はやぶさ2」では、カプセルの中にあるサンプルが入った箱を開ける前に、その中に入っている気体を採取します。その気体には、46億年前の太陽系の状況を知る手がかりがあるかもしれません。「はやぶさ2」では、カプセルを開けることで、太陽系の過去に迫ることになります。
Ryuguの名前を提案していただきました皆さま、どうもありがとうございました。また、それ以外の名前を考えていただいた皆さまも、本当にありがとうございました。皆さんの応援をいただきながら、「はやぶさ2」はスイングバイに向かっています。そして、その後、いよいよRyuguに向かいます。