限界拡張日誌


★第3拡張★ 合運用、やり切りました!

こんにちは!第2拡張からさほど時間経ってません(?)が、第3拡張です! この不定期具合…次はいつかと読者の皆さんをハラハラさせてしまっていることでしょう!
この勢いで第4拡張もすぐに執筆されるのか!?はたまた書き貯めと称してまた1年近く空くのか、、執筆者本人にも分かりません!(笑)

さて、前置きが長くなってしまいましたが、今回の限界拡張日誌は、2023年の11月から12月にかけて実施した「合」運用について、です!「合」とは、地球、太陽、探査機が一直線に並んでいる状態を表しています。図1は、いつもホームページのトップに貼ってある、はやぶさ2の現在位置(2023/11/28時点)を示した図です。よく見てみると、太陽を挟む形で地球と探査機が一直線に並んでいる状態になっています。この状態で地球から、 はやぶさ2の電波を取得しようとすると、アンテナが太陽からの電磁波も一緒に拾ってしまい、両者を見分けられず、まともに探査機の信号を取得できない状態になってしまいます。



図1 はやぶさ2の位置(2023/11/28時点)


そのため、この時期には普段のような探査機データの取得は諦め、必要最低限のデータ取得に全集中します。はやぶさ初号機の時代から活躍していた、 いわゆる1ビット通信という方式です。通信機からの信号送信の(変調の)オンオフによって受信レベルが上下する様子を、ビット通信の0, 1に見立てて、8桁の01データを2分程度の時間をかけて送信するのです。図2の左図は、まだ太陽干渉が弱い時期の1ビット通信の様子で、オンオフによる電波の強弱が、しっかり見えていますね。 一方の右図は、探査機、太陽、地球がほぼ一直線に並んでいる状態での1ビット通信の様子で、ノイズに埋もれて、オンオフ状態すら把握がままならない状態です。



図2 はやぶさ2からの電波強度の図
(左)オンオフが綺麗に見える状態、(右)オンオフがノイズに埋れている状態
(オンは通信機側の変調ONの状態で、図中で値が下がっているところ)

こんな状態では流石に何も分かりませんが、同じ時刻のデータを保持しておいて、繰り返し送信することが可能なので、スペアナで取得したそれらの電波強度データを平均化して、 より見やすい時系列データとして、情報を確認するような工夫も行っています(図3)。



図3  図2(右図)と同じ時間帯の電波強度データを5回平均した結果
(図2とは異なる機器で取得した電波強度データのため縦軸の値が異なる)

一方で、反対に探査機に対するコマンドを送るのもままならない状態ではあるので、何れにしても探査機の方は姿勢を動かしたりせず、静かに嵐が過ぎさるのを待つように安定して宇宙飛行させるに限ります。このように、探査機へのコマンドが通らなかったり、本当にオンオフ状態すら分かりづらい状態は今回の合期間中は、11/24~12/5ほどの2週間弱続きましたが、大きな問題も無く、この期間を乗り越えて、またはやぶさ2は元気な声を聞かせてくれました。 久しぶりの合運用、かつ、人員体制も拡張ミッションに移行して思い出すのも難しい中で何とか乗り切ることができて、ほっとしています。
ただ、次回の合運用は2024年3月ごろからを予定していますが、今度は軌道の幾何関係により、何と3ヶ月近い音信不通期間がやってきます。。。(汗)
3ヶ月近くも、まともに探査機にコマンドが打てない状況は、未だかつて、はやぶさ2は経験していません。基本的には大きな問題は無いのですが、 ちょっとした課題が命取りになる可能性もあるので、今回の合運用の結果をしっかり評価し、長期合運用に向けて、準備を進めていきたいと思います!


2024.1.10 三桝裕也