OPNAVな人々 | トピックス | JAXA はやぶさ2プロジェクト

トピックスOPNAVな人々

「はやぶさ2」は、地球から約3億kmも離れたリュウグウに無事に到着することができました。リュウグウの大きさはたった900m。3億km彼方の900mというのは、2万km先の6cmと同じです。つまり、日本からブラジルにある6cmの的を狙うのと同じことになります。非常に正確なナビゲーションが必要になりますが、それを実行したのが「はやぶさ2」プロジェクトメンバーの “OPNAVな人々” です。

OPNAVとは、英語でOptical Navigationの略です。 “オーピーナブ” と呼んでいます。日本語では「光学航法」となります。実際には「光学電波複合航法」と呼ぶのが正確ですが、略して光学航法と呼ぶことが多いので以下では光学航法と記載します。探査機と電波で通信をしつつ、探査機に搭載したカメラで目的地の天体を撮影して、探査機と目的の天体の両方の軌道を正確に推定する技術です。「はやぶさ2」では2018年5月のスタートラッカによるリュウグウ撮影の時にも行いました。詳しくは「スタートラッカのリュウグウ撮影による光学航法」の記事をご覧ください。

2018年6月3日に往路のイオンエンジン運転が終了してから、望遠の光学航法カメラ(ONC-T)でリュウグウを撮影しながらリュウグウに接近する光学航法が始まりました。光学航法の作業ループをまとめてみると図1のようになります。

  • 図1 光学電波複合航法の作業ループ
    画像クレジット:JAXA

図1で、まず一番左に記載されている4つのチームが、ONC-Tで撮影されたリュウグウの位置を、背景に写っている恒星を参照して正確に測定します。JAXA以外は、「はやぶさ2」の地上観測チームのメンバーで、小惑星観測のエキスパートです。今回担当したメンバーは、石黒正晃氏(ソウル大学)、奧村真一郎氏・浦川聖太郎氏(日本スペースガード協会)、そして黒田大介氏(京都大学)の4人です。この4人が独立に撮影されたリュウグウの位置を計測し、データが「航法チーム」に送られます。

航法チームは、リュウグウの位置データおよび電波航法によるデータに基づいて、探査機とリュウグウの軌道を推定します。推定された軌道は「誘導チーム」に送られます。誘導チームは今後の探査機の軌道を設計します。この航法チームと誘導チームが、 “OPNAVな人々” なのです。メンバーは後ほど紹介します。

誘導チームによる探査機の軌道は「運用チーム」に送られ、実際に探査機に送るコマンドが作られます。光学航法の時の運用チームの主担当は、JAXAの大野剛氏、山口智宏氏、尾川順子氏でした。作られたコマンドは探査機に送られて探査機の軌道が修正されます。すると探査機はまたリュウグウを撮影して、このループが回っていくことになります。

6月3日以降、このような作業ループを10回まわしました。つまり、10回の軌道制御を経て、「はやぶさ2」は無事にリュウグウに到着したわけです。約25日間に10回のループが回ったわけですから、作業は2、3日に1回行われたことになります。その結果をまとめたものが図2です。

  • 図2 光学電波複合航法による軌道の推定精度の推移。リュウグウの位置精度(①)と「はやぶさ2」-リュウグウの相対的な位置精度(②)を示す。探査機のところに書かれた数値は、その時点でのリュウグウまでの距離とリュウグウに対する探査機の相対速度を示す。誤差は1σでの値。
    画像クレジット:JAXA

図2を見ると、最初はリュウグウの位置誤差が140km、「はやぶさ2」-リュウグウの相対的な位置誤差が500kmありましたが、光学航法を繰り返すことで、誤差がどんどん小さくなっていったことが分かります。最終的には、「はやぶさ2」-リュウグウの相対的な位置誤差が0.1kmまで小さくなりました。

最後に、OPNAVな人々を紹介します(図3)。

  • 図3 OPNAVな人々。2018年、6月23日、TCM07後のOPNAV作業終了後に撮影。最前列左から、津田、大西、大木、菊地、真ん中の列左から、加藤、谷口、松岡、最後列左から、竹内、宮原、大井、高尾(敬称略)。
    画像クレジット:JAXA

OPNAV航法チームは、JAXAの竹内央氏、NECの松岡正敏氏・加藤貴昭氏・大井俊彦氏、富士通の谷口正氏・大西隆史氏・中野将弥氏・宮原伸博氏・青島千晶氏・藤井信明氏・矢上伴子氏です。また、OPNAV誘導チームは、JAXAの津田雄一プロマネ・菊地翔太氏・大木優介氏・高尾勇輝氏です。

さて、“OPNAVな人々”の次の出番は・・・?

はやぶさ2プロジェクト
2018.08.06