9月6日(米国時間)、米国の小惑星探査機「オサイリス・レックス」注1)(OSIRIS-REx)の地球スイングバイ注2)前後の観測キャンペーンが発表されました:
「
SPOT THE SPACECRAFT
」
「探査機を発見しよう」という感じでしょうか。
JAXA「はやぶさ2」プロジェクトでは、「
オサイリス・レックス
」チームと連携して、スイングバイ観測キャンペーンを行います。観測キャンペーンには、日本公開天文台協会(
JAPOS
)および日本惑星協会(
TPSJ
)に協力していただきます。多くの皆さんに観測に挑戦していただければ幸いです。(上記のオサイリス・レックスの記事には、日本側の協力についても記載されています。)
「オサイリス・レックス」の地球スイングバイについてお話する前にちょっと寄り道して... 今から約1年9ヶ月前になりますが、2015年12月3日に「はやぶさ2」が地球スイングバイを行いました。そのときには、主に日本国内から多くの皆さんが通り過ぎてゆく「はやぶさ2」の観測に成功しました。「はやぶさ2」の地球スイングバイの画像は、日本公開天文台協会および日本惑星協会のWebをご覧ください。
- 日本公開天文台協会(JAPOS):
http://www.city.himeji.lg.jp/atom/planet/info/campaign/haya2/hayabusa2_obs.html - 日本惑星協会(TPSJ):
http://planetary.jp/gallery/observational_data/index.html
これらのWebに掲載されている写真や映像を見ますと、当時の感動がよみがえってきます。「はやぶさ2」スイングバイの観測結果につきましては、 http://www.hayabusa2.jaxa.jp/topics/20160205/ にリンクされているページもご覧ください。次に「はやぶさ2」を地上から観測できるのは地球に帰還する2020年の12月頃になりますね。
さて、米国の探査機「オサイリス・レックス」(OSIRIS-REx)ですが、2016年9月8日(米国時間)に打ち上げられた探査機です。「はやぶさ2」と同じように小惑星から物質を持ち帰る小惑星サンプルリターンミッションです。目的の小惑星はBennu(ベンヌあるいはベヌー)という小惑星です。
Bennu alert! My favorite #asteroid was spotted for the first time since 2013 by the @PanSTARRS1 telescope. Details: https://t.co/3kipTO3C2c pic.twitter.com/wSKpw5LO11
— NASA's OSIRIS-REx (@OSIRISREx) 2017年8月8日
「オサイリス・レックス」も小惑星に向かう途中に地球スイングバイを行います。地球に最接近するのは2017年9月22日(世界時、日本時間では23日)です。この地球スイングバイのときに、「オサイリス・レックス」探査機が日本からも観測が可能であることが分かりました。「はやぶさ2」プロジェクトは、「オサイリス・レックス」プロジェクトと協力関係にあります。「オサイリス・レックス」の地球スイングバイでは米国側で観測キャンペーンを行うという連絡を受けましたので、日本側もこの観測キャンペーンに協力することになりました。今回も、日本公開天文台協会および日本惑星協会の皆さんに協力していただきます。
「オサイリス・レックス」が地球に最接近するのは2017年9月22日の17時頃(世界時)になります。これは、日本時間では9月23日の午前2時頃で、そのときの距離は地球表面から約1万7千kmとなります。しかし、この最接近のときには、日本からは見ることができません。日本から観測できそうな時間帯は、その直前の9月22日の22時から23時くらいです。このときに、東京から見ると高度(地平線からの角度)が30度くらいになります。地球からの距離は8万kmくらいです。「はやぶさ2」のときに比べて条件は悪くなりますが、是非、挑戦してみてください。
「オサイリス・レックス」がどこに観測できるかは、米国のジェット推進研究所(JPL)のHORIZONSというシステムで計算することができます。
https://ssd.jpl.nasa.gov/horizons.cgi
このページで必要なパラメータを設定すればよいことになります。詳しい説明は、日本公開天文台協会(JAPOS)と日本惑星協会(TPSJ)のWebをご覧ください。
- 日本公開天文台協会(JAPOS):
http://www.koukaitenmondai.jp/campaign/OSIRIS-REx.html - 日本惑星協会(TPSJ):
http://planetary.jp/OSIRIS-REx/
観測が成功した場合には、「オサイリス・レックス」のチームに報告したいと思います。撮影された画像などをご提供いただけますと幸いです。(提供いただける場合には、日本公開天文台協会や日本惑星協会の窓口からお願いします。)
9月22日の晩、晴れることを祈りましょう!
-
Do you have a telescope, a camera & an interest in astronomy? You may be able to spot me during #EarthGravityAssist: https://t.co/pBrLONBImM pic.twitter.com/SIruFeun9v
— NASA's OSIRIS-REx (@OSIRISREx) 2017年9月6日 -
I don't always make a close approach of Earth, but when I do, this is the path I fly over. #EarthGravityAssist https://t.co/ZhYBCcm3up pic.twitter.com/0sQ6Q6CBFt
— NASA's OSIRIS-REx (@OSIRISREx) 2017年9月6日
注1) OSIRIS-RExのカタカナ表記ですが、ここでは「オサイリス・レックス」と表記しています。これは、米国での発音に近い表記にしたためです。Osirisと書きますと古代エジプトの神話に登場する神様の名前となり、ギリシャ語読みでは「オシリス」となります。ですから「オシリス・レックス」という表記をされることもあります。ただし、OSIRISの名称の由来は、Origins(起源)、Spectral Interpretation(スペクトルの研究)、Resource Identification(資源の確認)、Security(安全性)という単語の頭文字を並べたものです。これらの言葉は探査の目的となっています。ちなみに、RExの方はRegolith Explorer(レゴリス探査機)から取られています。レゴリスというのは天体の表面にある砂のことです。
注2) 探査機が地球などの天体に接近してその引力を利用して軌道変更を行うことをスイングバイ(あるいはスウィングバイ)といいます。「オサイリス・レックス」のWebではスイングバイのことをより直接的な表現である「Earth Gravity Assist」と表現しています。
はやぶさ2プロジェクト
2017.09.07