トピックスLIDAR光リンク実験の論文発表

レーザ高度計(LIDAR)チームは、LIDARと地球とをレーザ光で結ぶ光リンク実験に2015年12月に成功し、その成果が欧文地球惑星科学専門誌”Earth, Planets, and Space”に2017年1月3日付でオンライン掲載されました(Noda et al., “Laser Link Experiment with the Hayabusa2 Laser Altimeter for In-flight Alignment Measurement”)。論文では、光リンク実験を通してLIDARの望遠鏡の視野方向を決定したことや、測距に使われる時計の校正が成功したことを報告しています。


通常のレーザ測距では、機器から光を出し、反射してきた光を受信することによって距離を求めます。今回は逆に、ほとんどの実験で、地上からの光をLIDARが待ち受けて折り返す「光リンクモード」に設定しました。実験では、オーストラリア・キャンベラにあるマウント・ストロムロ観測所からレーザ光を探査機に向けて照射し、探査機の姿勢を細かく振ることによって、レーザ高度計の望遠鏡が地球の方向をうまく向いたときにレーザが検出されたことを確認しました。この結果から、打ち上げ後の探査機に対する望遠鏡の方向を、打ち上げ前の測定よりも正確に決めることが出来ました。具体的には、LIDARの視野方向と探査機座標系との傾きの差がおよそ0.2度であることが分かりました。また、「光リンクモード」では、一秒間の待ち受け時間の中でレーザパルスを2回受信してその時間間隔を検出できるように作られています。地上の正確なパルス間の時間をレーザ高度計で検出することによって、レーザ高度計の時計(正確には周波数)を補正するという技術実証実験にも成功しました。

今回、光でのリンクが確立した最長距離はおよそ660万kmでした。月―地球間距離(約38万km)よりも遠い距離での光リンクはアメリカの水星探査機メッセンジャー、火星探査機マーズ・グローバル・サーベイヤーに続き、世界で3番目の希少な成功例となりました。

詳しくは以下のサイトをご覧ください。

国立天文台RISEプロジェクト: 「はやぶさ2」光リンク実験の結果が論文になりました

  • Credit: NAOJ/NICT/JAXA/CIT/SERC/NEC, Noda et al.