トピックスはやぶさ2 データ検索・可視化システム
JADE2 の紹介

・はやぶさ2と科学データ公開

はやぶさ2の観測データは、JAXAの公開サイト DARTS から誰でも自由に利用可能です。これまで公開されていたデータ検索システム「JADE」ではONCカメラの画像データを中心に提供していましたが、このたび複数の観測機器に対応した「JADE2」へと機能を拡張し、より多くの科学データを横断的に検索・可視化できる環境を整えました。


・JADE2とは

https://jade2.darts.isas.jaxa.jp/
JADE2は、はやぶさ2の観測データを簡単に検索・可視化できるWEBシステムです。宇宙科学データ公開サイトDARTSで公開されているデータを、より使いやすい形で提供します。従来のJADEではONCカメラの画像データのみが対象でしたが、JADE2では複数の観測機器のデータが一度に検索・表示できるようになりました。


・対応データ

    JADE2では、以下の観測データに対応しています。
  • ● ONC(光学航法カメラ) → 小惑星の多色フィルター画像
  • ● NIRS3(近赤外分光計) → 小惑星表面の反射率、鉱物や組成を知るための情報
  • ● TIR(熱赤外線カメラ) → 表面温度の情報
  • ● LIDAR(レーザー高度計) → 地形の起伏や形状の情報、小天体周りのダストの有無
  • ● MASCOT(小惑星着陸機)→ 小惑星地表面の詳細な画像や温度情報

  • 地図上での表示や比較が簡単にでき、複数の機器のデータをまとめて見ることができます。


・主な機能

詳しい使い方については以下のユーザーマニュアルを参照してください。
https://jade2.darts.isas.jaxa.jp/pdf/jade2_manual_jp.pdf
ここでは、基本モード(Basic mode)のいくつかの機能について取り上げて説明します。

データ検索機能の強化

観測機器ごとに プロダクトレベルや観測日時、観測角度などの詳細な検索条件を設定でき、複数の観測機器によるデータを 同一画面上で統合的に閲覧・比較することが可能になりました。これにより、観測データカバレッジの確認などを効率的に行うことができます。


検索画面例(基本モード)(©JAXA)

データ詳細表示機能(機器別)

    NIRS3
  • ● 任意地点の観測スペクトル形状を表示することができます。2つの表示モードがあり、「シングルポイントモード」では、同一観測シーケンス内における選択した地点のすべてのスペクトルプロファイルが表示されます。
  • ● 「マルチポイントモード」では、ユーザが任意に選択した最大10地点について、各地点の平均スペクトルプロファイルを表示することができます。


NIRS3マルチポイントモード表示例(左:地点選択画面、 右:スペクトルプロファイル)(©JAXA)

    TIR
  • ● 輝度温度、入射角、位相角、現地太陽時などの複数のカラーマップを地図上に重ねて表示することができます
  • ● 任意の地点を選択すると、その地点における温度の日変化を示す時系列グラフも表示可能です
  • ※これらの機能は、Level 3データが提供されている場合に利用できます。



TIRデータ表示例(左:温度マップ、 右:温度変化グラフ)(©JAXA)

    LIDAR
  • ● LIDARのレンジモード(距離計測モード)による高度情報は、緯度方向/経度方向の縦断図として表示することができます。観測データは最大10日間分のシーケンスを組み合わせて表示することが可能です。
  • ● また、ダストモードのデータについても、高度変化の様子を時系列グラフで確認することができます。



LiDAR レンジモード表示例(左:観測範囲、 右:観測高度情報)(©JAXA)

    MASCOT
  • ● MASCAMによる撮影画像や、MARA・MasMagの観測データプロファイルをJADE2ビューア上で簡単に確認できます。3Dビューアを活用すれば、MASCAMの観測方向に沿った視点で画像を立体的に表示することが可能です。


MASCOT MasCam画像の3Dビュー表示(©JAXA)

    データダウンロード機能
  • ● JADE2からデータを直接ダウンロードできるほか、コマンドライン用のダウンロードコマンドを発行する機能も備えており、自動化やスクリプト処理にも活用できます。


・はやぶさ2 軌道ビューア

  • ● はやぶさ2探査機の軌道表示機能を新たに追加し、探査機の位置と観測位置との関係を視覚的に把握できるようになりました。



  • はやぶさ2軌道ビューア(©JAXA)

    こんな方におすすめ

  • ● 宇宙探査データに興味がある方
  • ● 学校の教材・自由研究に使いたい方
  • ● 研究目的で多機器データを活用したい方



  • 今後の展望


    JADE2 により、はやぶさ2の複数観測機器データの横断的な検索・可視化環境が整いました。今後は各機器の高次プロダクトや今回未搭載の DCAM や MINERVA-II などのデータについても、順次JADE2に追加していく予定です。より多くの方に宇宙探査データを身近に感じてもらえる場として、JADE2をさらに進化させていきます。
    JADE2に関するご意見・お問い合わせ:z-hyb2visibility[x]ml.jaxa.jp
    (”[x]”を”@”と読み替えてください。)


    市川真弓(JLPEDA)
    巽瑛理(Instituto de Astrofisica de Canarias)
    はやぶさ2#データ利用WG
    2025.6.23