トピックスはやぶさ2プロジェクトマネージャおよび
拡張ミッションチーム長退任にあたって

2025年6月
はやぶさ2(元)プロジェクトマネージャ
はやぶさ2拡張ミッション(元)チーム長
津田雄一


2025年4月より,はやぶさ2拡張ミッション(はやぶさ2♯)は三桝チーム長率いる新体制に移行し,私ははやぶさ2のリーダーを退任いたしました. はやぶさ2計画に参画して18年,プロジェクトマネージャとしてチームを率いてから10年,思えばとても遠くまで来たものです.惑星間往復航行技術,そしてサンプルリターンの科学,それらの大成果創出に現場の一員として貢献できたことは,私にとって大変貴重な体験となりました. はやぶさ2は幸運なプロジェクトでした.はやぶさ(初号機)の数々の独創的な技術の継承,そしてはやぶさを超える成果への期待…,プロジェクト遂行中は,それらが私にとって大きなプレッシャーにもなりましたが,期待以上の成果を上げる強力なモチベーションになりました.ミッション遂行中,一般の皆様からは様々な形で応援や励ましの言葉を頂きました.この困難なミッションを遂行する上で,それらがどれだけ我々の力になったことか.ミッションを温かく,時には熱く(!)見守っていただいた皆様に心から感謝申し上げます.

思えば,私は良い仲間に恵まれました.プロジェクトを支えてくれたチームメンバー,惜しまず協力の手と頭と情熱を差し伸べてくれた国内大学・研究機関の皆さん,モノづくりを支えた企業の皆さま,米・独・仏・豪をはじめとした宇宙機関・国際学術コミュニティ―の皆さまに,深甚なる感謝の意を表します.皆さんが支えてくれる中,大きなプロジェクトを遂行できたことは,一宇宙科学人として幸せでした.また,支えあい強め合うチームワークを創り出せたことを誇りに思います.

はやぶさ2の成功は,はやぶさの教訓を真摯に反映しシリーズ技術として開発できたこと,JAXA職員および内外チームメンバーのモチベーションを十二分に喚起するミッションに仕立てられたこと,開発・運用を取り廻す十分な自由度が現場に与えられ若手とベテランのシナジーが発揮できたこと,直接社会と接点のあるミッション価値創出ができたことに帰するところが大きいと考えます.

はやぶさ2が,宇宙科学のみならず宇宙活動全般における日本への信頼や期待を高められたこと,科学技術立国としての日本の代表例となれたことは,望外の喜びです.
はやぶさ2が,後続の宇宙ミッションに,科学・技術・マネジメントの点で「礎」となったと評価いただければ幸いです.

今,私に残されていた最後の宿題である,次世代にバトンを渡すことが叶いました.はやぶさ2拡張ミッション(はやぶさ2♯)の新体制は,次世代の宇宙探査を担う若手中心の編成といたしました.はやぶさ2♯は挑戦のステージです.若手の新鮮な創意工夫で,はやぶさ2♯に更なる価値が積み増されることをご期待ください.

ところで,はやぶさ2プロジェクトでは,宇宙研の宇宙科学ミッションの伝統に則って,ミッションの節目に成果を総括する分厚いレポートを作成しています.その内容は技術的機微なのでお見せできませんが,その冒頭には,巻頭言としてプロジェクトのリーダーが思いをぶつけるスペースが用意されていました.はやぶさ2は長大なミッションだったので,リュウグウ到着時と,プロジェクト解散時の計2冊,それに合わせて2つの巻頭言を執筆しました.メンバー向けの文章なので,熱量高めだったり,オマージュ感を醸している点はご愛嬌ということでお汲みとりください.はやぶさ2チームの空気感をお伝えしたかったのと,今後の宇宙科学へのメッセージとして,ここに遺させていただきます.


はやぶさ2往路フェーズ完了の辞(リュウグウ到着時)


はやぶさ2プロジェクト解散の辞(地球帰還完了1年後)

津田雄一 元チーム長(左)から三桝裕也 新チーム長(右)への引き継ぎ



2025.6.16(記事掲載日)