トピックスイオンエンジンシステムの試運転完了、
地球帰還への巡航開始予定日時決まる

「さあ,前だけを見るときが来た.もう後ろは振り返らない.
進路は地球.巡航姿勢をとれ.イオンエンジン点火準備.
ありがとうリュウグウ.また逢う日まで.」
https://twitter.com/haya2_jaxa/status/1196622981457334272

・・・という津田プロマネのツイートが2000ファボを叩き出し、遠ざかるリュウグウの連続写真に皆がセンチメンタルに浸る中、イオンエンジン担当は極度のプレッシャーの中で復路イオンエンジン巡航に向けた試運転を行っていました。

試運転ではイオンエンジンの運転台数や運転条件を変えながら、エンジンや探査機の挙動を確認しました。
日本からはやぶさ2が見える時間だけでは足りないため、海外のパラボラアンテナも使用しての試運転でした。

深宇宙の運用は準備が命です。
起こりうる事象の予想、その場合見るべきデータ、そしてそれへの対処方法・・・。
色々考えすぎてドキドキだったイオンエンジン担当の心配をよそに、1年半ぶりに火を入れたエンジンは「さあ出番だ!」とばかりにスムーズに起動しました。

イオンエンジンに課せられた使命は「ΔV計画の死守」です。
カプセルを届けるためには、まだ遥か彼方にある地球の、その更に細い「リエントリー回廊」と呼ばれる細い軌道(通り道)に探査機を入れなければなりません。

このために、帰還までの軌道計画が作られます。この計画の中では「イオンエンジンを、いつ、どの方向に、どれくらい噴くべきか」が決められており、そこから大きく逸脱すること無くエンジンを稼働させることが求められるのです。

カーレースにレコードラインがあるように、ラリーにペースノートがあるように、僕らはΔVノルマを守りつつ、日々地球に向かって舵を切り、オールを漕ぐのです。

万全に試運転を完了しても、宇宙は何があるかわからないのでいつも気を抜けません。
プレッシャーはかかりますが、これがロケットやエンジンを扱う輸送屋さんの負うべき責務であり、やり甲斐なのでしょう。
「ようやく我々の出番ですね」試運転の前日、西山先生がニヤリと笑いました。

地球に向けた復路イオンエンジン巡航開始は、日本時間 12月3日 午前11時頃 の予定です。

エンジン始動、準備宜し。
まもなく小惑星探査機はやぶさ2は巡航を開始する。
そして、再び地球に戻ろう。


当日は運用の様子をできる範囲でお伝えしたいと思います。
応援よろしくお願いします!


はやぶさ2プロジェクト イオンエンジングループ(文責:細田)
2019.12.02


  • 図:苦楽をともにした椅子君

※参考情報
帰還の巡航フェーズでは、イオンエンジンは2期に分けて運転されます。
予定では、第1期イオンエンジン運転は2019年12月から2020年1月頃となり、 第2期イオンエンジン運転は2020年5月から9月頃となります。
これは予定ですので、変更される場合があります。