トピックス「第20回国際レーザレンジング研究会」
参加報告

ドイツ・ポツダム中央駅から徒歩でおよそ15分。ドイツ語でTelegrafenberg、無理やり日本語に訳すと「電信の丘」という小高い丘の上にGFZ(GeoForschungsZentrum:ドイツ地球研究センター)はあります。プロイセン時代の1832年から光による電信実験が行われたことから名前のついた由緒ある場所です。ここにはGFZの他にもいくつか研究所があり、電信の丘に至る道にはアインシュタイン通りという名前がついています。


  • 写真1 GFZの入口にある「光電信線 プロイセン1832-1849」の看板

  • 写真2 総合研究施設の入り口にある看板

ここGFZで2016年10月9日から14日に開催された第20回国際レーザレンジング研究会に参加してきました。この研究会は2年または3年ごとに行われ、国際レーザレンジング事業(ILRS)の下、測地学での重要な観測手法である衛星レーザ測距(SLR)や月レーザ測距、地上の時刻を探査機に光で送信する時刻転送(time transfer)などを扱う研究会です。最近では、地上からのレーザ光による宇宙ゴミ(スペースデブリ)の状態監視についての話題も増えてきました。ちなみに2013年の第18回総会は日本の富士吉田市にて開催されています(主催者としての参加記事がこちらにあります)

筆者は「惑星間測距と時間転送」というセッションの中で、地上のレーザ送受信局からはやぶさ2のレーザ高度計(LIDAR)に向けてレーザを照射した実験(実験の顛末記がこちらにあります)の結果を発表しました。実験が昨年(2015年)の10月から12月にかけて行われたこと、日本とオーストラリアの地上局から試行し、オーストラリアからのレーザがはやぶさ2のLIDARで受信出来たこと、はやぶさ2がNASAの探査機MESSENGERとMars Global Surveyorに続いて世界で3番目に遠いレーザリンクの成功例になったことなどを紹介しました。一日の最後の発表で、かつセッション自体も時間が押し気味だったためか、頂いた質問は1件だけで少し拍子抜けしましたが、その後に個人的に面白かったと話かけてくれた方もいて、それなりに理解してもらえたと思います。ちなみに、はやぶさ2が戻ってくる2020年には夏に東京でオリンピックが行われる、という説明をいつもするのですが、今回もその部分では笑い声やざわざわという反応があり、印象を残すことができたようです。

  • 写真3 筆者の講演の様子

その後食事に招かれ、初対面の挨拶で名前を言うと、「ふふん」と言われるだけなのですが、知人が「彼は『はやぶさ2』に関わっているんだよ」、と言った瞬間に「おー」という反応になります。さすが「はやぶさ2」、この挨拶、今後も使えるな、などと思いながら、改めてはやぶさ2の知名度の高さを感じた次第でした。

次回の総会は2018年にオーストラリアのキャンベラで行われるという発表がありました。キャンベラは光リンク実験で大変お世話になった地上局(Mt. Stromlo)がある場所です。2018年はリュウグウにはやぶさ2が到着する年ですので、次回もはやぶさ2の話ができたら良いなと思います。

最後に知人から、日本でスペースデブリの研究会を開催したいのだが、誰かいないか?という課題(宿題?)を頂きました。筆者自身はこの方面には明るくないのですが、我こそはと思う方、ぜひご連絡を。

はやぶさ2LIDARチーム 野田寛大(国立天文台)
2016.10.18