トピックスこちら「はやぶさ2」運用室:No.14

国内局運用 〜2014年2月の思い出〜


昨年(2015年)12月の地球スイングバイ以降、はやぶさ2は米国航空宇宙局(NASA)のキャンベラ局(オーストラリア)、欧州宇宙機関(ESA)のマラルグエ局(アルゼンチン)の支援を得て、データの送受信を行ってきましたが、4月中旬に約4ヶ月半ぶりに国内にある局での運用を再開しました。

まずは臼田64m局より南に位置しており、南側がひらけている内之浦34m局ではやぶさ2が見え始めました。遅れること2週間、5月から臼田64m局での運用が始まり、以降臼田64m局で順調に運用を実施しています。

そこで、今回は臼田64m局など地上局を使うために行う事前の準備についてお話ししようと思います。

探査機や人工衛星などを地上局で運用するには、打上げ前にその探査機や人工衛星がその地上局と通信できるかどうかを確認する必要があります。電波の周波数帯やデータ通信方式は標準化されているので、同じ方式を採用している地上局であれば、基本的に通信を行うことはできます。しかし、地上局において各探査機や各人工衛星固有の設定を行い、その設定で正しく通信できることを確認する試験が必要です。この試験は適合性試験(コンパチビリティテスト)と呼ばれ、探査機や人工衛星の実機、もしくはシミュレータを地上局現地に持ち込み、両者を組み合わせた通信試験を行うことで、適合性を確認します。また、試験の際には相模原〜地上局〜探査機をつないで通信確認を行う、End to End試験も行います。

はやぶさ2では臼田64m局、内之浦34m局、NASAの試験局に探査機の通信シミュレータを持ち込み、試験を行いました。その中でも臼田64m局での試験は思い出深いものとなりました

臼田64m局との試験はあかつきの運用時間帯を避けた平成26年(2014年)2月6日〜15日の夕方〜明け方にかけて毎晩実施しました。試験は臼田64m局から探査機へデータを送るコマンド送信確認、探査機から臼田64m局へデータを送るテレメトリ受信確認、探査機と臼田64m局の距離を測定するレンジング確認と進みますが、計測にはとても時間が掛かります。特にテレメトリはビットレート毎に試験を行うため、大変時間が掛かります。はやぶさ2は8bpsというとてもビットレートの低いモードを備えているため、一つのデータを受信するだけで、8分以上も待たねばなりません。モードを変えて測定、モードを変えて測定を繰り返します。

そして迎えた最終日2月14日の夕方。朝から降り続いた雪はやむ気配もなく、入局する午後4時頃には山奥にある臼田宇宙空間観測所まで続く一本道はチェーンを巻いた2駆の自動車では上がっていけないほど積もっていました。試験はアンテナ建屋内で実施するのであまり気にしていませんでしたが、雪はどんどん降り積もり、午前2時にはアンテナ建屋から研究棟の行き来も困難になるほど積もったため、試験を一時中断して、1時間の雪かきタイムとなりました。その後も雪は降り続けましたが、試験は順調に進み、予定通り朝8時に試験は無事に完了しました。

帰り支度をしていると誰からともなく、そもそも下山できるのかという話になりました。通常であれば除雪車が除雪をしながら上がって来てくれるのですが、その日は除雪車が来る気配がありません。テレビを観て初めて雪でとんでもないことになっていることに気付いたのでした。

山奥の臼田宇宙空間観測所まで除雪車はすぐには来られそうにないだろうということで、早々にあきらめて、食糧確保に奔走しました。1年以上賞味期限の切れたカップ麺等も多数発掘?されましたが、幸い米や保存食、冷凍された食材が準備されており、とりあえず数日は飢えをしのげそうな感じでした。除雪車はすぐには来られないとはいえ、その日中には来てくれると信じていたメンバーでしたが、除雪車の到着予定時刻は尋ねる度に変わるため、長期戦になることを覚悟しました。

2月15日は試験のデータ整理をして過ごし、2月16日は皆でアンテナの除雪作業を行いました。口径64mのアンテナの雪かきです。当然のように翌日には腕、足腰が筋肉痛になりました。そして、2月17日未明。誰かが「除雪車が来た!」と叫びました。とうとう待ちに待った除雪車がやってきたのです。このときお米は数合しか残っておらず、あともう少し遅かったら修羅場になっていたかもしれません...

その後、出社した臼田宇宙空間観測所の職員から街の様子を聞いたり、シミュレータの輸送準備をしたり、試験の後片付けをして、結局下山できたのは2月17日の夜でした。

過酷な臼田64m局での適合性試験でしたが、適合性を確認でき、現在の運用でも参考になるデータがたくさん得られ、大変有意義なものとなりました。

  • 写真:3日間耐え抜いたメンバーを積もった雪と共に

はやぶさ2プロジェクトRyo Suzuki (集合写真で小さくガッツポーズ)
2016.08.26

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「はやぶさ2」は,人類が訪れたことのない小惑星「リュウグウ」との往復航行をする宇宙船です.どんな冒険が待ち受けているか誰にも分からないけれど,きっと面白い航海になるはずです。どんな旅をするか,楽しみにしていてください。
(プロジェクトマネージャ 津田雄一)