トピックス超大型望遠鏡VLTによる
小惑星リュウグウの観測成功

− はやぶさ2が目指す小惑星リュウグウの現在の姿 −

小惑星リュウグウが日本時間の2016年7月12日に、チリのヨーロッパ南天天文台にある、超大型望遠鏡VLT(Very Large Telescope)にて観測されました。観測を行ったのはDavide Perna博士、Antonella Barucci博士(パリ天文台)を中心としたはやぶさ2地上観測チーム(※)です。今回の観測では、 FORS2という観測装置を用いて可視波長域でのライトカーブデータと分光データを取得しました。詳細なデータ解析は今後なされることになります。

一般的にはライトカーブデータを解析することによって、小惑星の自転状態(自転周期や自転軸の向き)や形状を推定することが可能です。一方、分光データから小惑星の表面物質を推定することが可能です。これまでの研究から、小惑星リュウグウは自転周期が約8時間で球形に近い形をしていることが推定されています。また、表面の物質は炭素質コンドライトに似た反射スペクトルをしていることがわかっています。

リュウグウは球形に近い形をしているので、これまでの中口径望遠鏡を用いたライトカーブ観測では推定された自転軸の向きに大きな不確定性があります。自転軸の向きは、探査機が到着した後の運用計画(例えばサンプリングをする時期の決定)に大きく影響することから、プロジェクトチームとしてはできるだけ早い段階で知りたい情報のひとつです。更に、小惑星の反射スペクトルは観測の度に異なることから、表面物質が不均一に分布していることが示唆されてきました。

今回観測に用いた望遠鏡は、口径が8.2mと世界でも最大級の望遠鏡のひとつです。天文台が位置するチリは、現在冬季のため夜が長く、自転周期8時間の天体の自転状態や表面物質の不均一性を調査する研究目的に適しています。この観測以外にも、Nicholas A. Moscovitz博士(ローウェル天文台)らの率いる研究グループでも長期的なライトカーブ観測が実施されています。これらの観測データを集約し詳細に解析することによって、探査機が到着するまでにより詳細な自転状態に関する情報の取得に努めます。

  • 図1 超大型望遠鏡VLT(Very Large Telescope)が観測した小惑星リュウグウ(丸印の中)。
    2016年7月12日11時44分(日本時間)撮像

※はやぶさ2地上観測チームについて
はやぶさ2地上観測チームは、JAXA、国立天文台、ソウル大学、韓国天文研究院、ローウェル天文台、マックスプランク研究所、プラハ・カレル大学などから構成される国際研究グループで、地球軌道からの天文観測を通じて、小惑星探査が安全かつ円滑に遂行されるために設けられたはやぶさプロジェクトのサブグループです。

はやぶさ2地上観測チーム
2016.07.16