トピックスこちら「はやぶさ2」運用室:No.8

南半球局での運用


前回からだいぶ時間の空いてしまったこちはやです。今回ははやぶさ2の南半球局での運用についてのお話です。

昨年12月のスイングバイ以降、はやぶさ2は南半球側を飛んでいますので、南半球のアンテナでしかデータ送受信ができません。そのため、はやぶさ2は米航空宇宙局(NASA)のキャンベラ局(オーストラリア)、欧州宇宙機関(ESA)のマラルグエ局(アルゼンチン)の支援を得て、データの送受信を行っています。

外部機関の地上局を利用して運用を行うには相手側の通信プロトコルに従う必要があります。以前は相手毎に相手側の通信プロトコルに変換する装置を開発していましたが、現在は宇宙データシステム諮問委員会(CCSDS)という宇宙データシステムの標準化を行っている委員会により標準化されたSLEプロトコル(SLE: Space Link Extension)というプロトコルを用いて相互運用を実現しています。お互いがSLEプロトコルに変換することにより、SLEプロトコルを採用している機関であれば、お互いの通信プロトコルを考慮しなくとも相互運用が可能になるわけです。

言葉も同様に英語にプロトコル変換して話しています。会話は通常の英会話と少々異なり、いわゆる無線用語で会話します。映画や海外ドラマなどで聞いたことある方も多いのではないでしょうか。主なものをご紹介します。

会話の開始時は
 「How do you read me?」:音声は良好か?
 「I read you five by five.」:大きく明瞭に聞こえます。
 (または、「I read you loud and clear」:大きく明瞭に聞こえます。)
 「I read you the same.」:私も同じようによく聞こえます。
から始まり、
質問をされれば、
 「Affirmative.」:正しいとき
 「Negative.」:誤っているとき
と応えます。ここで、単に「Yes」とか「No」とは言わないのが重要です。
相手の通話内容を理解した場合は
 「Copy that.」または単純に「Copy.」
と応えます。日本語の「コピー」とはちょっと意味が違いますね。
聞きもれや、間違いなど起こさないように、相手の言葉には確実に応答することが大事なのです。応答がないと伝わったのかわからないですからね。

スペルなどを伝える際には、アルファベット毎にそのアルファベットが頭文字となる単語を言います。単語はほぼ決まっていますが、人によっては違うことを言う人もいます。例えば「HAYABUSA2」と伝えたい場合は
 「Hotel, Alpha, Yankee, Alpha, Bravo, Uniform, Sierra, Alpha, Two」
と言います。(いきなり言われても「私は」すぐには理解できませんが・・・)

普通の英会話と同じなのはお礼を言うときですね。運用が終わり通話を終了する際には
 「Thank you very much for your support!」
等の言葉で感謝を伝えます。

日本国内から見えるようになるのは4月下旬から。それまでは、キャンベラ局とマラルグエ局のお世話になります!

今回は海外局での運用についてご紹介しましたが、地上系システムは臼田局、内之浦局の国内局から、NASAやESAの海外局、また運用室や管制室の機器に至るまで多くのシステムにより構成されています。機会があれば、地上系システムを構成する様々なシステムをご紹介したいと思います。

はやぶさ2プロジェクト R.S.
2016.03.01

2016.08.25 R.S.追記:HAYABUSA2のスペルを伝える際の"B"に誤りがありましたので修正しました。無意識にAlphaにつられてBetaと書いてしまったようです。 今回のように誤って話してしまっても、簡単な誰でも知ってる単語で頭文字が合っていれば、基本的には通じるので、大丈夫なはず!?です。