トピックスこちら「はやぶさ2」運用室:No.6

スイングバイドキュメント+その後


打ち上げ後、最初の難関となる地球スイングバイですが、2015年12月3日に無事終了しました。この「こちはや」に、スイングバイ運用について報告するつもりでしたが、その後のスイングバイ関連作業に忙殺されてしまって、あっと言う間に3週間が過ぎ去ってもう年末。忘れないうちに、スイングバイから現在までの運用の状況について書いておこうと思います。

まず、スイングバイ当日、12月3日(木)。朝、出勤しようとしたらJR横浜線が小机・町田間が不通! 急遽、別ルートで淵野辺に向かいました。この日の朝は、他の路線でもいくつか事故等があったようです。小雨でした。

09:30。交通機関のトラブルはあったものの、宇宙科学研究所に到着。プレスセンターの準備のための打ち合わせにちょうど間に合いました。宇宙科学研究所、本館2階会議場です。表示する画像等を確認しました。

11:00からは、「はやぶさ2」運用室で、運用前のブリーフィングです。本日は、L+365。打ち上げ後、ちょうど1年です。ブリーフィングでは、本日の運用の内容を確認しました。たとえば、内之浦からのアップリンク(電波の発信)は世界時で3時から10時(日本時間では12時から19時)であるとか、臼田からの追跡時間など、スケジュールの確認を行いました。特に、地球最接近後は、もう臼田や内之浦からは「はやぶさ2」の追跡はできません。本日は、キャンベラ局からの追跡になります。キャンベラ局では、世界時10:30(日本時間で19:30)から追跡が行われることも確認されました。

また、地球スイングバイでは、深宇宙探査機としては例外的に地球に接近しますから、探査機からの電波が強くなりすぎます。そのために、地上局ではアッテネータという信号強度を弱める装置を通すなど、入念な打ち合わせがありました。さらに特殊なこととして、日陰があります。「はやぶさ2」は打ち上げ後、初めて日陰に入ります。地球の影の中に入ってしまって太陽の光が当たらなくなります。そうすると太陽電池による発電ができなくなりますが、これは探査機にとっては異常事態です。その日陰のための対策も必要です。日陰時刻は、日本時間で18:58から19:18です。

そして、11:18、津田プロマネから「がんばりましょう!」の一言があり、ブリーフィングが終わりました。

12:00。内之浦局からの運用が始まりました。「はやぶさ2」は、通常は臼田で運用していましたから、内之浦からの運用は珍しいことになります。運用開始時点で少しどたばたしましたが、探査機からの電波の受信や通信が開始され、予定されていた作業が次々と進められていきました。運用開始は12時でしたが、実は、探査機に搭載されている広角の光学航法カメラの1つであるONC-W2では地球の撮像が日本時間で9時から始まっていました。撮影された画像データを探査機からダウンリンクする作業も行いました。そして、まだ内之浦からの運用中の17時過ぎに、次のキャンベラパス運用のためのブリーフィングも行いました。さらには、キャンベラ局とも電話で話しをして事前の確認を行いました。

そして、18:58。事前の計算結果と寸分(寸秒?)たがわず、 探査機から『日陰入り』を表す信号が送られてきました。探査機は、日陰に入ったことを正しく認識して、正常に動作を続けているようです。テレメトリをモニターしているメンバーからは、「よし!」とか「問題なし」という声が飛び交っていました。

19:00。内之浦での運用が終わり、臼田局での受信も19:04に終わりました。いよいよ地球最接近時刻の19:08。ですが、このときには探査機に対しては特に何もすることはありません。次のキャンベラ局での運用のために対応しているうちに、いつの間にか最接近時刻は過ぎていました。

19:25。キャンベラ局運用開始時刻の5分前ですが、キャンベラ局との接続がなされました。つまり、相模原の管制室においてキャンベラ局で受信された情報を見ることができますし、探査機へ命令を打つこともできるようになりました。「はやぶさ2」の状況がどのようになっているのか、緊張の一瞬です。

「はやぶさ2」からの情報(テレメトリ)が、各担当者の端末に表示されました。プロマネから、内容確認の指示が飛びます。セーフホールド状態には入っていないようです。セーフホールドというのは、緊急事態が起こったときに、探査機が最も安全な姿勢状態になることですが、探査機の状態はスイングバイ直前のまま変わっていないようです。さらに探査機からの信号を見ると、「日陰明け」となっていました。探査機が正しく日陰・日照を認識して正常に手順を自動実行したことを確認しました。さらに、姿勢関係の細かいチェックや、電圧、温度状況など、同時に確認が進められ、各担当から問題なしの報告が挙がってきました。スイングバイによって予定通りの軌道に入ったかどうかの確認はすぐにはできませんが、探査機の状態は問題ないようです。ここで、津田プロマネから「運用室、管制室の皆さん、今、システム、あとサブシステムを確認しましたがスイングバイ明けの状態としては『正常』、ということが確認できました。お疲れ様でした!」という言葉があり、拍手が起こったのです。本日のスイングバイ運用は無事成功ということになりました。その後、キャンベラ局での運用は24時過ぎまで続きました。

  • 探査機の状況が正常と確認され、拍手!

JAXA相模原キャンパスの大会議場は、「はやぶさ2」のプレスセンターとして、沢山の記者さんが来られていました。その場で、スイングバイ結果の速報や説明を行ったり、撮影された地球の画像も公開したりしました。

さらに、スイングバイをする「はやぶさ2」を地上望遠鏡で撮影しようというキャンペーンを行っていましたが、18時過ぎくらいから撮影成功の連絡も続々入ってきました。天気が心配でしたが、かなりの場所で観測が成功したようです。夜のニュースでも、この地上観測の話題がずいぶん放映されていました。

ということで、長い一日が終わりました。打ち上げ以降で最初の山場となるスイングバイが無事成功しました。とりあえず、ほっとしたというのが実感です。

その後:

その後ですが、まず12月7日くらいまで軌道データを取得して、さらに数日間かけて精密軌道決定とその評価を行いました。その結果、軌道としても予定通りの変更ができていて、スイングバイが軌道変更という本来の意味でも成功したことが確認されました。12月14日に、プレスリリースにて発表しています。また、スイングバイ前後で撮影した画像や実験結果も、次々と「はやぶさ2」プロジェクトのWebにて発表しました。12月24日には、スイングバイ総括の記者説明会を行いました。

運用の方は、キャンベラ局に加えて、アルゼンチンのマラルグエ局でも行われており、2016年4月下旬までは、この2局から「はやぶさ2」の運用が行われることになります。12月22日には、スイングバイ運用体制から定常の巡航運用となりました。しばらくは、探査機の状況を確認したり、軌道を確認したりする作業が続き、2016年の3月から4月ごろに、本格的なイオンエンジン運用を開始する予定です。そして、2018年のリュウグウ到着を目指します。

おまけ:はやぶさ2の1歳の誕生日 「はやぶさ2」打ち上げ1周年とスイングバイの成功を記念して、プロジェクトメンバーで小さなお祝いをしました。そのときのケーキです。(プロマネの音頭で、ハッピーバースデーを歌いました。)

はやぶさ2プロジェクト M.Y.
2015.12.28

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「はやぶさ2」は,人類が訪れたことのない小惑星「リュウグウ」との往復航行をする宇宙船です.どんな冒険が待ち受けているか誰にも分からないけれど,きっと面白い航海になるはずです。どんな旅をするか,楽しみにしていてください。
(プロジェクトマネージャ 津田雄一)