トピックスこちら「はやぶさ2」運用室:No.5

11月26日,TCM2時の管制室


前日にナビゲーションチームから提供された軌道決定結果は,想定通り. 軌道計画チームは,軌道修正量が小さいことから,11月3日のTCM1の時とは異なり,今回はスラスタ噴射を2回で実施することを決めた. -X方向と-Z方向に1回ずつ.その「ベクトル和」で,望みの軌道修正を実現する. 今回は軌道制御の正確さにこだわり,TCM1の時に把握したスラスタ性能の小さなクセも反映した. 11月26日午前8時,臼田局が,正常に入感. いつもは4名程度で運用しているはやぶさ2も,今日は15名ほどが管制室に詰めている. 姿勢正常.ドップラー計測正常.探査機ステータス問題なし. 運用を統括するのはスーパーバイザー.スーパーバイザーの指示により,コマンダーが2回のスラスタ噴射コマンドをまとめてはやぶさ2へ送信.この指令は時限式で,指定した時刻にスラスタが噴射されることになる. 全てのコマンドが正常に探査機に到達したことを確認. あとは,結果を待つのみ.あらゆる異常を想定して,受信電波のモニター,ドップラー観測のモニター,姿勢テレメトリ,探査機状態表示のモニターを,各担当者が注視する. そして,TCM-Z実行時刻.300万km離れた宇宙空間で探査機が起こったことは,10秒遅れて地上に届く. 果たして,予定通り10秒のタイムラグで,テレメトリによりスラスタ噴射確認. ドップラー計測,軌道変化を確認. 探査機状態,問題なし.各担当から,スーパーバイザーへ第2回噴射に支障なしとの報告が集まる. 続いて,第2回噴射時刻がやってくる.TCM-X確認.こちらも計画通りだ. ナビゲーションチームが即座に,ドップラー計測を使った軌道の変化量の評価を始める.10分ほどで,予定通りの軌道修正ができたとの報告が管制室に伝わる. 管制チーム内に,「TCM2運用の完了」が宣言され,皆の緊張が解ける. 雑談がてら,勝手にあちらこちらで反省会が始まり,次の計画への改善点が話し合われるのも,このチームのいいところだ.

しかし,運用はここで終わっていない. 「続いて,地球・月撮像マヌーバーの手順を進めます.」とコマンダーからアナウンス.

地球と月は300万kmまで近づいている.この絶好の機会に,はやぶさ2の姿勢を変更し,光学航法カメラの視野を地球方向へ向けるのだ. はやぶさ初号機の時とは軌道が大きく異なるので,カメラを地球に向けるためには大きな姿勢変更が必要だ.大きな姿勢変更にはスラスタ噴射が伴うので,軌道を乱す原因になる.探査機システムチームと観測機器チームが,精密な軌道制御とより良い観測プランのバランスを練った結果,TCM2直後に,この観測ができることになった. 観測運用も計画通り完了.TCM2後の夜は,軌道の精密計測のため,米国NASA深宇宙追跡局(DSN)の支援も受け,丸一日連続で運用が続いた...

並行して,探査機から送られてくるデータは,待ってましたとばかりサイエンスチームが解析処理を始める.航法カメラ担当のモニターに映し出されたのは,できたての地球と月の画像.運用メンバーがみんな集まり,深宇宙空間から見たとても美しい地球と月の姿に,歓声とため息.

まだまだ粗削りだが,良いチームワークでここまで来ている.小惑星近傍フェーズでは,TCMの比ではない難しい運用が連続する.手始めとしては,チームワークの良い訓練になったと思う. 準備は整った.いざ,スイングバイへ!

はやぶさ2プロジェクト Y.T.
2015.11.30

  • 図:はやぶさ2の飛行軌跡とTCM運用(実績と予定)

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「はやぶさ2」は,人類が訪れたことのない小惑星「リュウグウ」との往復航行をする宇宙船です.どんな冒険が待ち受けているか誰にも分からないけれど,きっと面白い航海になるはずです。どんな旅をするか,楽しみにしていてください。
(プロジェクトマネージャ 津田雄一)