トピックス「はやぶさ2」の地球スイングバイについての
情報を公開します!

「はやぶさ2」は、小惑星Ryuguに向かうために、12月3日に地球に接近し、地球の引力を利用して軌道制御を行います。これを地球スイングバイと呼びますが、ここでは、地球スイングバイをするときの「はやぶさ2」の軌道と、地上の望遠鏡による観測についてお知らせします。

地球スイングバイをする探査機の軌道について

2014年12月3日に打ち上げられた「はやぶさ2」は、打ち上げ後の1年間は地球の軌道と似た軌道に沿って、太陽の周りを公転していました。そして、ちょうど一年後の2015年12月3日に、地球に接近し、その軌道は小惑星に向かうものに変わります。

地球に最も近づく時刻は19時7分ごろ(日本標準時)で、そのときの高度は約3100km、場所は太平洋上空です。このスイングバイによって、太陽に対する「はやぶさ2」の速度は、約30.3km/sから約31.9km/sに増速します。最接近時の地球に対する速度は、約10.3km/sです。

  • (図1)スイングバイの概念図
  • (図2)スイングバイによる軌道変化の様子(太陽が原点にある座標系で見た場合)。
    地球の軌道に近いところにあった「はやぶさ2」の軌道(左)が、スイングバイ後は小惑星Ryuguの軌道に近いものになることが分かる。
  • (図3)スイングバイによる軌道変化の様子(地球が原点にある座標系で見た場合)。
    地球を原点に置いた座標系で見ると、「はやぶさ2」の軌道は約80度曲がる。太陽中心の座標系で見た場合と印象が異なるが、何を基準にするかで軌道の見え方は大きく異なる。
  • (図4)「はやぶさ2」の直下点の軌跡。
    直下点とは、「はやぶさ2」と地球中心を結ぶ線が地表と交わる点のことである。地球が自転しているために、直下点の軌跡は複雑になる。

「はやぶさ2」の軌道情報

スイングバイ前後での「はやぶさ2」の軌道データを公開します。このデータは、各種アプリケーションやコンテンツ(WEB、CG、映像画像、教材他)の制作をはじめ、さまざまな創作活動にご利用ください。(なお、このデータを使うときには、天体の軌道についての知識が必要です。)

地上望遠鏡による「はやぶさ2」の観測について

「はやぶさ2」が地球に接近したときに、地上の望遠鏡を用いて観測できる可能性があります。ここでは、観測のための情報をお知らせしますので、ご関心のある方は観測に挑戦してみてください。

ご注意!> 探査機の明るさは非常に暗い可能性があり、大きめの望遠鏡でないと観測できない可能性があります。探査機の明るさの予測は非常に難しいのでここでは明るさについての情報はありませんが、例えば2002年に火星探査機「のぞみ」の地球スイングバイ時の観測に成功したときには、「のぞみ」の明るさは15等〜16等でした。

日本国内では、12月3日の日没後から19時前にかけて、「はやぶさ2」が観測できる可能性があります。緯度が高いほど、観測の条件はよくなります。国内の北部、中央、南部として、たとえば、名寄、臼田、石垣島を選んだ場合、図5のようになります。

  • (図5)各地から見える「はやぶさ2」の仰角(高度)。
    ここでは、北は名寄、南は石垣島を例としてあげた。赤い※印で示す線は、太陽の仰角であり、日没前を示す。また、日陰とは、「はやぶさ2」が地球の影に入ってしまうことを指す。

参考)
国外からの観測ですが、次のようになります。

  • ハワイでは、まさに最接近したときに頭上近くを探査機通るが、日陰のため探査機には太陽の光が当たっていない。
  • オーストラリアでは、最接近の直後から観測が可能となる。
  • ヨーロッパや北米では観測条件は悪く、観測は難しいと思われる。