今回、はやぶさ2に搭載された光学航法望遠カメラ(ONC-T)による銀河系中心の観測画像を用いて天文学の研究を行いました。
宇宙に漂う細かいチリ(星間塵)が恒星の光を散乱して作る淡い光のことを銀河拡散光と言います。これまでの観測により、チリが少ない場所では、銀河拡散光の観測値は、光が一度だけ散乱されるという理論とほぼ合っていることがわかっていました。しかし、チリが多い場所では、銀河拡散光の詳しいモデルはありませんでした。
そこで今回の研究では、ONC-Tが撮影した、銀河系中心のチリの多い領域の画像を解析しました。観測は2020年4月6日に行われました。
その結果、チリが多いほど、銀河拡散光の明るさは弱くなることがわかりました。これは、チリが少ない場所での過去の観測結果とは逆の傾向です。この理由を説明するために、チリの層が背後の星の光を受けて光っているというモデルを検討したところ、今回観測したデータをうまく説明できることがわかりました。
本研究成果は、2025年7月20日に米国科学誌
掲載サイトhttps://iopscience.iop.org/article/10.3847/1538-4357/addfd3

光学航法望遠カメラONC-Tで撮影した銀河系中心方向の画像。
画像クレジット:九州工大、東京都市大、関西学院大、JAXA、千葉工大、東京大、産総研、東京科学大、
ラ・ラグーナ大、パリ天文台、立教大、明治大、神戸大
佐野圭(九州工業大学)
2025.7.17