トピックスどうもありがとう、CAM-H!

残念なお知らせですが、再突入カプセルの地球帰還後に探査機の状況を調べたところ、分離カメラ制御部(CAM-C)が故障していることが判明しました。放射線による劣化と考えられ、正常に起動することができなくなっていたのです。原因の調査と復旧の可能性の検討を行いましたが、プロジェクトとしては、故障と判断しました。したがいまして、CAM-Cに接続されています小型モニタカメラ(CAM-H)の撮影もできないことになります。 このことは、拡張ミッションにとっては残念なことですが、CAM-Hは打ち上げ後のサンプラーホーンの状態をモニターするために搭載されたカメラで、その役割は十分果たしてくれました。さらに、2回にわたる小惑星着陸の瞬間を鮮明に捉えることに大成功。それらは「はやぶさ2」の成果を代表する映像となりました。 拡張ミッションでは光学航法カメラ(ONC)が使えますので、問題はありません。 なおCAM-Cは分離カメラ(DCAM3)も制御していましたが、DCAM3は2019年4月5日に小惑星リュウグウで分離し役目を果たしています。
図1は、CAM-Hによる最初と最後の撮影です。似たような写真に見えますが、打ち上げ後にサンプラーホーンを伸展したばかりのときと、2回のタッチダウンを終えて役目を果たした後のサンプラーホーンが写っています。


図1 小型モニタカメラ(CAM-H)による撮影。
(画像クレジット:JAXA)
左:打上げ後にサンプラーホーンを伸展したときの写真。2014年12月5日撮影。CAM-Hによる最初の写真。
右:小惑星リュウグウから出発する前の2019年10月16日に撮影した写真。これがCAM-Hによる最後の写真となった。サンプラーホーンにリュウグウの粒子が多数乗っていることが確認できる。


CAM-Hは、2回のタッチダウンのときに画像を撮影することができ、想定を遙かに超えた印象的な映像の撮影に成功しました。「はやぶさ2」を代表する大きな成果のひとつとなったと言えます。CAM-Hは皆様からの寄附金により実現しました。ご支援いただきました皆様に、心より御礼申し上げますとともに、この素晴らしい達成感を共有したいと思います。
開発者コメント:澤田弘崇
まず初めに、CAM-Hを含めたDCAM3システムの全構成器機に「お疲れ様でした」と声をかけたいです。CAM-Cの故障によりCAM-Hが使用できなくなってしまったことは非常に残念ではありますが、CAM-H自身は100点満点以上の素晴らしい成果をあげることができました。タッチダウンの瞬間を捉えた画像は開発者自身が一番驚くほどの素晴らしい画像でした。
思い起こすと、DCAM3のシステムは小型ソーラー電力セイル実証機IKAROSで開発したDCAMの技術をベースとしていて、カメラ映像の入力チャンネルに空きがあり、皆様からの寄付金でタッチダウンのシーンを撮るカメラを追加しようという話になったとき、このチャンネルにカメラを接続することで実現することができました。短期間で開発することができたのもコレが理由です。
タッチダウンの瞬間を2回ともバッチリと捉えることができ数百枚もの画像データを全て地上に降ろすことができました。残念ながら拡張ミッションで使うことはできませんが、CAM-Hも目的をパーフェクトに達成することができ本望だと思います。
改めてご支援頂いた皆様に感謝したいと思います。誠にありがとうございました。CAM-C、CAM-Hも本当にありがとう。

参考:

※小型モニタカメラ(CAM-H)とその搭載位置・視野について

n/a
図2 小型モニタカメラ(CAM-H)
(画像クレジット:JAXA)



図3 小型モニタカメラの位置と視野
(画像クレジット:JAXA)



図4 小型モニタカメラの視野の説明。
視野の中にロケット結合リングが入っているため、図1の写真の視野の右上が遮られている。
(画像クレジット:JAXA)


※小型モニタカメラ(CAM-H)による映像



2018年10月25日:タッチダウン1リハーサル3(TD1-R3)
(画像クレジット:JAXA)


2019年2月22日:第1回タッチダウン
(画像クレジット:JAXA)



2019年7月11日:第2回タッチダウン
(画像クレジット:JAXA)



はやぶさ2プロジェクト
2021.05.10