トピックス第2回タッチダウン運用

7月9日から11日にかけて、第2回のタッチダウン運用が行われます。ここでは、運用のスケジュールなどについてご紹介します。(運用名の記号はPPTDになりますが、ここでは「第2回タッチダウン」と記載します。)

第2回タッチダウンについての検討は、これまでのWeb記事も参考にしてください。
 (1) 第2回タッチダウンへのアプローチ −その1:タッチダウン地点付近の観測−
 (2) 第2回タッチダウンへのアプローチ −その2:タッチダウン地点の詳細−
 (3) 第2回タッチダウンへのアプローチ −その3:行うべきか、行わざるべきか−

第2回タッチダウンのシフトは、7月9日から始まります。7月9日は、降下するための設定を行います。実際の降下は、7月10日の10:46(機上、日本時間、以下同様)に開始する予定です。これまでの降下運用と同様に、最初は秒速40cmほどで降下します。21:06には高度約5kmに達し、ここからは秒速10cmほどで降下を継続します。そして、7月11日の09:40に高度30mに達し、ホバリングに入ります。そして、タッチダウンは最も早くて10:05頃、遅い場合には10:45頃になる予定です。タッチダウンの直後に探査機は秒速65cmほどで上昇に転じます。ホームポジションには7月12日に戻る予定です。ここで述べたタッチダウン運用の全体は図1に示されるようになります。


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    図1 第2回タッチダウンの運用概要
    レーザ・レンジ・ファインダ(LRF)への切り替えは、高度30mから降下する途中で行われる。*印のタッチダウンの時刻は、最も早くて10:05(機上、日本時間)頃となり、遅い場合には10:45頃と予測される。
    (画像のクレジット※:JAXA)

低高度における運用を詳しく示したものが図2です。7月11日の09:40に高度30mに達すると探査機はホバリング状態になりますが、ここでターゲットマーカ(TM)を捕捉します。これは自律機能で行われます。いつ捕捉できるかは事前には分かりませんが、09:51くらいに捕捉できたとしますと、探査機はすぐに降下を開始します。この時点で高度はレーザ高度計(LIDAR)で計測されていますが、この降下の途中でレーザ・レンジ・ファインダ(LRF)に引き継がれます。なお、ターゲットマーカを視野の中心に捉えながら降りていくことになります。そして、09:57に高度8.5mに達し、再びホバリング状態になります。


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    図2 低高度における運用シーケンス
    高度8.5mからタッチダウンまでは、リュウグウの引力に引かれて降下するので放物軌道になるが、今回は、ほぼ真下に降りると考えてよい。*印の時刻は、最も早く動作が進む場合の一例であり、実際の時刻は、この時刻の前後ないし最大で40分ほど遅れる可能性がある。
    (画像のクレジット※:JAXA)

高度8.5mでのホバリングでは、まず探査機の姿勢を着陸姿勢に変更します。着陸姿勢とは、基本的には小惑星表面に平行な姿勢なのですが、1回目のタッチダウンのときも行いましたように、探査機のイオンエンジン側(カプセルと反対側)を少し上げた姿勢にします。プロジェクトでは、この姿勢を“ヒップアップ”と呼んでいます。姿勢を変えるとターゲットマーカが視野の端の方に移動してしまいますが、そうならないように姿勢を変更しながら探査機は水平方向にも移動します。姿勢変更が終わった後、さらに水平移動をし、タッチダウン地点の中央上空まで行きます。そして、すべての条件が整うと、10:03に降下を開始し、10:05に表面に達してタッチダウンをして、すぐに上昇に転じることになります。

ただし、図2や上記の文章中に書かれている高度30m以下での時刻は最も早く探査機の動作が進行した場合の例であることに注意してください。高度30mに達すると、探査機は自律で動作します。探査機は1つ1つ確認を行いながら次の動作に移行していくことになるので、より長い時間がかかる可能性もあります。そのために、タッチダウンの時刻は、早くて10:05頃、遅い場合には10:45頃になるわけです。他の時刻についても同様で、ここで記載した時刻よりも最大で40分ほど遅れる可能性があります。

高度8.5mからタッチダウンまでの探査機の動きの動画を図3に示します。


  • [別ウィンドウで開く(mp4, 3.7MB) ] 図3 高度8.5mからタッチダウンまでの探査機の動き(16倍速)。緑色の円が、タッチダウンを行う領域であるC01-Cbである。右下の画像は、広角の光学航法カメラ(ONC-W1)の画角に入る領域を示す。
    (画像のクレジット※:JAXA)

タッチダウンをする場所は、プロジェクトがC01-Cbと名付けたところですが、詳しくは最初に書きました(2)の記事を参考にしてください。図4には、タッチダウン地点付近の3次元的な図であるDEM(Digital Elevation Map)の動画を掲載します。C01-Cbは比較的平らですが、その周りには大きな岩塊(ボルダー)があることが分かります。


  • [別ウィンドウで開く(mp4, 5.6MB) ] 図4 第2回タッチダウン地点付近のDEM(Digital Elevation Map)の動画。
    (画像のクレジット※1:JAXA、東京大、高知大、立教大、名古屋大、千葉工大、明治大、会津大、産総研、神戸大、産業医大)

第2回タッチダウンは、「はやぶさ2」プロジェクトとしてリュウグウ滞在中では最後となる大仕事です。最大限の注意を払って慎重に進めていきます。成功することを願いつつ・・・


はやぶさ2プロジェクト
2019.07.10



※ 画像を引用する場合にはクレジットを記載してください。
※1 もしクレジットの短縮が必要な場合は「JAXA、東京大など」と表記してください。