「MASCOT (Mobile Asteroid Surface Scout)」はDLR(ドイツ航空宇宙センター)とCNES(フランス国立宇宙研究センター)によって共同開発された小型着陸機です。MASCOTは「はやぶさ2」の -Y面(高利得アンテナを頭、イオンエンジンを背中としたときの左手側の面)に格納されていて、ここから分離されます(図1)。
MASCOTは0.3×0.3×0.2 mの直方体で、重さは約10kgと、MINERVA-II1(直径18cm×高さ7cm、1.1kg)よりは少し大きな着陸機です(図2)。
上面にアンテナがあり、MINERVA-II1と同じように「はやぶさ2」の中継器 (OME-E) との通信をおこないます。側面には広角カメラ (MASCAM) が搭載されていて、周囲の画像を撮影できます。底面には分光顕微鏡 (MicrOmega) があり、リュウグウ表面の鉱物の組成や特徴を調べます。そのほか、表面温度を測る熱放射計 (MARA) や磁場を測定する磁力計 (MASMAG) も搭載しています。
MASCOTもMINERVA-II1と同じくホッピング機構を持っています。機体内部にあるアームをモーターで回転させる反動で、機体の姿勢を変えたり跳び上がることができます。MASCOTは上面アンテナが上、分光顕微鏡の面が下になる姿勢で活動するように設計されているため、もしリュウグウ表面で静止した際に違う姿勢になっていた場合には、ホッピング機構を動かしてこの姿勢に変えます。なお、MASCOTがホップして移動するのは1回だけです。MINERVA-II1のように何度もホップするわけではありません。
MASCOTの着陸地点としては、リュウグウの南半球にあるエリアが選ばれています(図4)。「はやぶさ2」のタッチダウン地点、MINERVA-II1とMASCOTの着地点がそれぞれ重ならないようにし、なおかつ、「はやぶさ2」との通信可能時間や太陽光が当たる時間、科学的に有意義な探査が期待できる場所であることなどを考慮して決定されました。
MASCOTは太陽電池ではなく、機体に内蔵されているリチウム一次電池で動作します。電池の持続時間は約16時間(リュウグウの自転2回分ほど)ですので、MASCOTの分離に成功したら、そこからリュウグウの2昼夜にわたって連続して運用をおこないます。電池の残量がなくなったら運用終了となります。
はやぶさ2プロジェクト
2018.10.02