トピックス「はやぶさ2」トークライブVOL.2報告
~イオンエンジン~

たまてばこ vol.4

2回目の「はやぶさ2」トークライブの報告です。トークライブVOL.2は、2016年4月23日に相模原市立博物館にて行われました。「はやぶさ2」ではイオンエンジンを担当している西山和孝さんのトークで、テーマも「イオンエンジン」です。今回も、博物館の部屋がほぼ一杯になるくらい沢山の人の参加がありました(写真1)。

  • 写真1 はやぶさ2トークライブVOL.2の会場の様子
    スクリーン脇で話しているのは、司会の細田さん

まず最初に、西山さんの講演のプレゼンファイルと当日の様子を撮影したビデオを挙げておきます。

 当日のビデオ(YouTube)

詳しく知りたい方は是非、これらを参照してください。西山さん(写真2)が非常に詳しい資料を作って説明してくださいましたので、これが分かればあなたもイオンエンジンの専門家へ第1歩を踏み出したことになるかも。

  • 写真2 熱くイオンエンジンを語る西山さん

以下では、簡単に西山さんが話された主な項目をまとめてみます。詳しくは、上記の資料やビデオをご覧ください。

■電気推進ロケットの一種、イオンエンジンの紹介
・ロケットの原理:何か物質(=質量)を吹き出すことで飛んでいく
・なるべく速く物質を吹き出すのがよい
・電気ロケットでは、化学ロケットの10倍くらいの速さで吹き出すことができる
・ツィオルコフスキーのロケット公式が重要! →ロケットの増速量が計算できる
・電気ロケットは燃料節約!
・電気推進ロケットのいろいろなしくみ
・電気推進ロケットの開発の歴史
・日本では、1988年くらいから研究が始まる:Yoshino-Iと命名
・西山さんが研究を始めた頃はYoshino-IV、耐久性が問題だった
・1996年にプロジェクトスタート:18000時間や20000時間の耐久性試験
・グリッドにイオンが直撃することで穴が広がるが、カーボン複合材の電極グリッドでは優れた耐久性が示された

■初代「はやぶさ」の成果、教訓
・惑星探査機としては、米国のDS1(ディープスペース1)が先にイオンエンジンによる航行をした
・「はやぶさ」の運用では、西山さんが1600時間以上にわたってスーパーバイザを担当し、これは、ダントツ一位。
・イオンエンジンのサブシステムとしては、イオン源と中和器が有名であるが、他にも沢山のシステムがある
・「はやぶさ」の運用のおさらい。
・2回目のイトカワ着陸の後に電波が途絶え、約7週間後の2006年1月23日に電波が受信されたが、
このときに運用をしていたのは西山さん
・「はやぶさ」での苦労は、キセノンを使って姿勢制御やイオンエンジンのトラブルの後のクロス運転、
地球帰還時の軌道微修正など
・最終的には25000時間の運転ができた

■「はやぶさ2」イオンエンジンの開発
・「はやぶさ2」については、イオンエンジンについていろいろな対策をした
・具体的に行ったことは、プラズマの点火のしやすさの確認、磁場を強くすることで中和器での汚れの発生を抑制する、中和器の耐久試験(31280時間経過)、イオン源の増強(2割増し)、電極の穴の大きさの修正、グリッドの厚さの修正、など

■「はやぶさ2」イオンエンジンの宇宙運用
・「はやぶさ2」の紹介
・イオンエンジンに関する作業の説明
・ロンチロック(イオンエンジンが取り付けられているパネルを固定している金具)をはずす
・まずは、ベーキング運用:太陽の光をイオンエンジンエンジンに当てたりヒーターを使ったりして約50度に暖め、 余分な水分を蒸発させる
・1台ずつのイオンエンジンの試験運転:A、B、C、Dすべて確認
・2台運転、3台運転(ACDの組み合わせ)の確認
・24時間2台自律運転:2015/1/20成功
・地球スイングバイに向けた運用(EDVEGA):2015年3月、6月、9月
・2016年3月22日から本格運転を行っている

■発展型のイオンエンジン
・μ20:はやぶさMK2や黄道面脱出ミッションで検討
・μ10HIsp:電圧を5倍、推力が2.2倍、ソーラー電力セイルで検討
・軽量化:DESTINYミッションで検討

■パネルディスカッション(西山・細田・吉川)
西山さんのトークの前半が終わった後で、少しだけ時間をとって、司会の細田さんと筆者で雑談をしました(写真3)。将来のイオンエンジンがどこまで進展するのかとか、そもそもなぜ西山さんがイオンエンジンの研究を始めたのかなど、いろいろ面白い話題が飛び出しました。結論は“じゃんけんが重要”ということになったのですが、詳しく知りたい方は上記ビデオをご覧ください。

  • 写真3 3人でパネルディスカッションをしているところ
    中央が西山さんで、右が司会の細田さん、左が筆者(吉川)

トークライブVOL.2にも、多数の皆さんに参加していただきまして、どうもありがとうございました。また、今回も相模原市立博物館の皆さんやボランティアの皆さんにお世話になりました。

「はやぶさ2」トークライブVOL.3は、2016年6月12日(日)に、「はやぶさの日」およびAsteroid Day特別企画として 開催されます。

※この文章は、西山さんにもチェックしていただいています。

「はやぶさ2」トークライブコーディネーター 吉川真
2016.06.06

Message from Project 一覧

「はやぶさ2」は,人類が訪れたことのない小惑星「リュウグウ」との往復航行をする宇宙船です.どんな冒険が待ち受けているか誰にも分からないけれど,きっと面白い航海になるはずです。どんな旅をするか,楽しみにしていてください。
(プロジェクトマネージャ 津田雄一)