サイエンス目的

太陽系には小惑星と呼ばれる小さな天体が多数存在しています。大きなものでは直径が1000kmくらいの小惑星もありますが、より小さなものが多く、最近では大きさが数mの小惑星も見つかるようになりました。このような小さな天体を探査する理由は、どこにあるでしょうか。それは、意外にも我々自身、我々が住む地球を理解することに繋がっているのです。

  • 小惑星を探査し、地球を理解する

地球などの惑星は、元は小さな天体が集まってできたと考えられています。しかし、惑星が誕生する過程でいったんどろどろに溶けてから固まっているため、惑星をつくった元の物質についての情報は失われています。いっぽう、小惑星や彗星はあまり進化していない天体ですから、太陽系が誕生した頃やその後の進化についての情報を持っていると考えられています。これらの天体は、「始原天体」とも呼ばれています。このような天体を調べることにより、太陽系がどのように生まれ、どのように進化してきたのか、また私たちのような生命をつくる元になった材料がどのようなものであったのかについて、重要な手がかりが得られる可能性があります。そして、このような知識は、太陽系だけでなく、その他の惑星系の誕生や進化を比べる上でも不可欠です。

小天体の探査目的は、科学だけではありません。小惑星や彗星は、過去に何度も地球に衝突しており、そのたびに当時の地球環境に大小様々な影響を与えてきました。6550万年前の恐竜絶滅の原因とされる天体衝突から、最近ではロシアに落下して被害を与えた隕石もありました。「宇宙からの天災」は今後も発生するであろうと容易に推測されます。こうした天体の地球衝突に備える「スペースガード」活動の一環としても、地球に近づく小天体の探査は重要なテーマです。

また、地球に接近する軌道を持つ小天体は、月に続く近未来の有人探査のターゲットとして近年大きな注目を集めています。さらに遠い将来、人類が深宇宙空間に進出した暁には、月や火星のような重力の大きな天体ではなく、重力の小さな小天体の資源を利用するほうが効率的だと考えられます。このような利用方法を探る上でも、小惑星探査は重要なのです。